今回は、ファクタリング業者の正しい選び方について解説します。
ファクタリング業者とファクタリング手数料の関係
ファクタリング業者のビジネスモデルの仕組みとしては
- ファクタリング手数料5.0% → 20社中1社に貸し倒れが起こると → トントン(会社の運営コストを考えれば赤字)
- ファクタリング手数料10.0% → 10社中1社に貸し倒れが起こると → トントン(会社の運営コストを考えれば赤字)
- ファクタリング手数料20.0% → 5社中1社に貸し倒れが起こると → トントン(会社の運営コストを考えれば赤字)
という関係になります。
ファクタリング業者は、ファクタリング手数料の割合によって審査方針が決まってきます。
- ファクタリング手数料:1.0%~5.0% → 3社間ファクタリング業者(売掛先の承認が必要)
- ファクタリング手数料:5.0%~10.0% → 2社間ファクタリング業者で「審査が厳しい」業者
- ファクタリング手数料:10.0%~20.0% → 2社間ファクタリング業者で「審査が甘い」業者
- ファクタリング手数料:20.0%~40.0% → 2社間ファクタリング業者で「何でも買い取る」業者
つまり、
審査が厳しいファクタリング業者ほど → ファクタリング手数料は安い
という関係が成り立つのです。
一概に「ファクタリング手数料の安い業者が良いのか?」というわけではなく、「ファクタリング手数料の安い業者」にも、「ファクタリング手数料の高い業者」にも、メリットデメリットがあるのです。
それでも、筆者は「ファクタリング手数料の安い業者」をおすすめします。
その理由を解説します。
ファクタリング手数料が10%を超えたら、中小企業の経営は持たない!?
経済産業省のデータでは
中小企業の分類
製造業
企業分類 | 企業数 | 構成比 |
---|---|---|
①稼げる企業 | 1,066 | 17.3% |
②経常利益率の高い企業 | 633 | 10.3% |
③自己資本比率の高い企業 | 1,329 | 21.6% |
④その他の企業 | 3,119 | 50.7% |
非製造業
企業分類 | 企業数 | 構成比 |
---|---|---|
①稼げる企業 | 976 | 21.2% |
②経常利益率の高い企業 | 475 | 10.3% |
③自己資本比率の高い企業 | 1,247 | 27.1% |
④その他の企業 | 1,904 | 41.4% |
売上高経常利益率の分布
売上高経常利益率の推移
04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 | 13 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
全産業 | 稼げる企業(①) | 7.41 | 8.19 | 8.37 | 8.08 | 6.68 | 6.12 | 7.99 | 8.97 | 9.29 | 9.35 |
経常利益率の高い企業(②) | 3.93 | 4.28 | 4.77 | 4.49 | 2.86 | 2.14 | 5.39 | 6.94 | 7.43 | 8.16 | |
自己資本比率の高い企業(③) | 3.61 | 3.68 | 3.95 | 3.31 | 1.82 | 0.75 | 1.80 | 1.29 | 1.15 | 1.41 | |
その他の企業(④) | 1.68 | 1.89 | 1.89 | 1.64 | 0.38 | ▲0.21 | 1.03 | 0.78 | 0.70 | 1.12 | |
製造業 | 稼げる企業(①) | 8.44 | 9.58 | 9.86 | 9.62 | 7.43 | 6.47 | 9.47 | 10.33 | 10.82 | 10.84 |
経常利益率の高い企業(②) | 4.16 | 4.43 | 5.32 | 5.06 | 2.83 | 1.41 | 5.89 | 7.52 | 8.14 | 9.34 | |
自己資本比率の高い企業(③) | 4.61 | 4.73 | 5.30 | 4.21 | 1.89 | 0.43 | 2.23 | 1.52 | 1.09 | 1.44 | |
その他の企業(④) | 2.30 | 2.27 | 2.27 | 1.97 | 0.23 | ▲0.58 | 1.25 | 0.90 | 0.64 | 1.16 | |
非製造業 | 稼げる企業(①) | 6.27 | 6.67 | 6.73 | 6.39 | 5.86 | 5.75 | 6.38 | 7.49 | 7.62 | 7.73 |
経常利益率の高い企業(②) | 3.64 | 4.09 | 4.04 | 3.74 | 2.91 | 3.11 | 4.72 | 6.16 | 6.50 | 6.60 | |
自己資本比率の高い企業(③) | 2.55 | 2.57 | 2.51 | 2.35 | 1.74 | 1.09 | 1.33 | 1.05 | 1.22 | 1.39 | |
その他の企業(④) | 0.68 | 1.27 | 1.26 | 1.11 | 0.63 | 0.38 | 0.66 | 0.59 | 0.79 | 1.07 |
となっています。
売掛債権譲渡(ファクタリング)を10%のファクタリング手数料で継続してしまうと
≒ 売上が10%減になる
≒ 経常利益率が10%程度下がる(コストを伴わない売上のみが下がるため、経常利益も同じだけ下がる)
→ 大抵の中小企業は、経常利益が赤字に転落してしまう
ということを示しているのです。
本来であれば、全額100%支払われていた売掛金が、90%になってしまうのですから、これも当然です。
- 中小企業の売上高経常利益率の平均:3.4%
- 売上高経常利益率が10%を超えている中小企業の割合:8.4%
ですから、ファクタリング手数料10%でも、
のは火を見るよりも明らかなのです。
当然、多くの経営者は
と思っているのですが、
ファクタリングは、売掛債権の譲渡ですから、一時的に資金繰りが改善しても、本来売掛金が入金されるはずだった、1カ月後、2カ月後の入金額は減少してしまいます。
その時までに、別の売上が立つ、リストラやコスト削減を行う、のであれば、問題ありませんが・・・
何もなければ
という状況になりやすく、1カ月、2カ月、3カ月・・・とファクタリングの継続利用が増えてしまいがちなのです。
資金繰りを改善して、会社の経営を復活させるには
ということが言えるでしょう。
ファクタリング手数料20%というのファクタリング業者は、経営に対するマイナスのインパクトがかなり大きくなってしまいます。
だからこそ、ファクタリング手数料が10%未満のファクタリング業者を選ばなければならないのです。
ファクタリング手数料が10%未満の業者を選ぶ方法
ファクタリング手数料が10%未満の業者を選ぶべきなのはわかりましたが・・・どうやってファクタリング手数料が10%未満の業者を選ぶべきなのでしょうか?
その1.ファクタリング手数料の上限が10%に近い業者を選ぶ
ファクタリング業者の多くは
- ファクタリング手数料:2.0%~○○%
と下限の手数料は、明記しているものの上限の手数料は明記していないところが多いのです。
このようなファクタリング業者の場合は、大抵は20%ぐらいのファクタリング手数料が設定されるのが一般的です。
現実問題として
- ファクタリング手数料:20%
なのですが、こう書いてしまうとお客さんが来ないので
- ファクタリング手数料:2.0%~○○%
と、いかにも2%などの下限の手数料をアピールして、ウェブサイトには表記しているのです。
しかし、ファクタリング手数料の上限を記載しているファクタリング業者もあります。
ファクタリング手数料の上限を明記していて、10%に近いファクタリング業者
MEDS JAPAN/ファクタリング
ファクタリング手数料:2.0%~10.0%
財務会計支援機構/ファクタリング
ファクタリング手数料:7.0%~11.0%
ファクタリング手数料の上限が明記されていて、その上限が10%に近いのであれば、審査がどんなに悪くても、「買取ができる」という段階であれば、上限値以上にファクタリング手数料が上がることはありません。
その2.複数のファクタリング業者から買取の相見積もりを取る
- ファクタリング手数料:2.0%~○○%
というファクタリング手数料の上限を明記していないファクタリング業者の場合は
- 5.0%なのか?
- 10.0%なのか?
- 20.0%なのか?
見積もりを取ってみるまではわかりません。
ここで「ファクタリング手数料が10%未満の業者」を選びたいのであれば、「数打ちゃあたる」で
のが効率的なのです。
2社、3社と複数のファクタリング業者から見積もりを入手すれば
- 貴社が保有している売掛債権のファクタリング手数料の相場
が見えてきます。その中で、一番ファクタリング手数料の安い(買取価格の高い)ファクタリング業者を選べば、10%を切るファクタリング業者に出会える可能性も高まるのです。
その3.3社間ファクタリングに切り替える
多くの会社経営者は、売掛先に知られる3社間ファクタリングを敬遠します。
ですから、クライアントに「資金繰りに問題があること」を知られてしまうと、今後の取引の継続にマイナスの影響がある可能性が否めないからです。
売上がなくなってしまったら、元も子もありません。
しかしながら、ファクタリング手数料だけに着目すると
- 2社間ファクタリング:10%~20%
- 3社間ファクタリング:1%~5%
ですから、圧倒的に3社間ファクタリングの方がファクタリング手数料は安いのです。
ファクタリング業者も、売掛金を入金する側の売掛先に「同意書」をもらっておけば、貸し倒れリスクが少なくなるため、ファクタリング手数料を安く設定できるのです。
3社間ファクタリングを利用するには、売掛先(クライアント)に「同意」してもらう必要がありますが・・・
クライアントに
「欧米では十年以上前から、資金調達方法の選択肢として、ファクタリングが一般化している」
「経営上、資金繰りの問題はなく、引き続き商品やサービスを提供し続けられる」
・・・
などの説得をして、誤解のないようにリスクヘッジすることも可能です。
ワダツミ/ファクタリング
考察
ファクタリング手数料が10%未満の業者を選ぶ方法には
- その1.ファクタリング手数料の上限が10%に近い業者を選ぶ
- その2.複数のファクタリング業者から買取の相見積もりを取る
- その3.3社間ファクタリングに切り替える
という方法があります。
中小企業で経常利益率10%を超えるのは至難の業ですので、ファクタリング手数料が10%でも、継続して利用するとなると、かなり資金繰りが厳しい状態に追い込まれてしまいます。
ファクタリング手数料20%であれば、尚更厳しいのです。
だからこそ、上記の方法を検討して、ファクタリング手数料を10%以下に抑えられるファクタリング業者選びが必要になるのです。
、ファクタリング手数料を10%以下のファクタリング業者はこちら
ファクタリング手数料が安いファクタリング業者の審査に通らない場合はどうすれば良いのか?
方法は2つあります。
その1.ファクタリング手数料が高い業者に申し込む
前述した通りで
- ファクタリング手数料が安い業者 → 審査が厳しい
- ファクタリング手数料が高い業者 → 審査が甘い
という関係にあります。
ファクタリング手数料が安い業者の審査が通らないのであれば、ファクタリング手数料が高い業者に申し込むしかありません。
ファクタリング手数料が高いと資金繰りに与えるマイナスの影響が大きくなってしまうので、利用するのは1回と決めて、その間に経営を立て直すことが必要になります。
その2.売掛債権担保ローンを検討する
ファクタリングと似たような「売掛債権」を利用した資金調達方法に
- 売掛債権担保ローン
というものがあります。
売掛債権担保ローンであれば、上限金利は貸金業法の規定で100万円以上であれば、年率15.0%ですので、利息負担は、ファクタリング手数料の負担よりも小さいのです。
審査基準も、ファクタリングとは異なるので、試してみる価値はあるでしょう。
売掛債権担保ローンを取り扱っているノンバンク
エスワイシー
まとめ
ファクタリング業者を選ぶときにはファクタリング手数料が10%以下のファクタリング業者を探すのが重要です。
なぜなら、中小企業の経常利益率を見れば、10%を超えるファクタリング手数料でファクタリングの利用を続けるのは、かなり厳しい経営状態になってしまうからです。
ファクタリング手数料が10%未満の業者を選ぶ方法には
- その1.ファクタリング手数料の上限が10%に近い業者を選ぶ
- その2.複数のファクタリング業者から買取の相見積もりを取る
- その3.3社間ファクタリングに切り替える
という方法があります。
まずは、この方法を試して、できるだけファクタリング手数料の安いファクタリング業者を見つけましょう。
ファクタリング手数料の安いファクタリング業者で審査落ちしてしまった場合には
- その1.ファクタリング手数料が高い業者に申し込む
- その2.売掛債権担保ローンを検討する
という方法があります。
ファクタリング手数料が高いファクタリング業者を利用する場合には、ファクタリングの利用は1回に抑えると腹を決めて、経営を立て直す努力が必要です。
「ファクタリング業者の選び方を教えてください。」