ファクタリングが危険といわれる主な理由
ファクタリングは急な資金需要に対応できる便利な手段ですが、一方で「危険」といわれる背景にはいくつかの明確なリスク要因があります。ここでは経営者や財務担当者が特に注意すべき代表的な理由を整理します。
免許や登録が不要で参入障壁が低い
ファクタリングは「売掛債権の譲渡契約」に基づく取引であり、貸金業のように免許や登録が義務付けられていません。そのため、金融事業の経験や体制がない事業者でも容易に参入できる点が問題視されています。結果として、運営実態が不透明な業者や悪質なサービスが市場に紛れ込む余地が生まれています。
規制する法律が存在せず手数料が不透明
銀行融資の場合は利息制限法や貸金業法で利率が制御されていますが、ファクタリングには手数料や契約条件を規制する法律が存在しません。このため、相場を大きく外れた高額手数料や、不明瞭な費用項目を請求されるケースが後を絶ちません。利用者にとってはコストが予測できず、資金繰りを逆に圧迫するリスクとなります。
偽装ファクタリングや違法業者の横行
一部にはファクタリングを装って高利貸付を行う「偽装ファクタリング」が存在します。たとえば給与ファクタリングのように貸金業に該当するにもかかわらず登録を行わず、違法な利息を徴収するケースです。こうした事例は金融庁も注意喚起しており、利用者が誤って関われば法的トラブルや経営上の大きなダメージを受けかねません。
過度な依存による経営圧迫
ファクタリングは繰り返し利用が可能である一方、手数料が累積すれば売上の目減りにつながります。短期的には資金繰り改善に役立っても、長期的に依存すればキャッシュフローが圧迫され、経営状態をさらに悪化させるリスクを伴います。計画性のない利用は資金調達手段の多様化を阻害し、財務の柔軟性を失わせる要因となります。

実際に摘発された違法ファクタリング事例
ファクタリング自体は本来「売掛債権の売却」に基づく合法的な取引ですが、過去にはこれを装った違法行為が摘発された事例が数多くあります。経営者や財務担当者が安全に利用するためには、実際にどのような手口があったのかを知ることが重要です。
貸金業登録をせず高利貸付を行った事例
「ファクタリング」と称しながら、実際には貸金業登録を行わずに高金利で資金を貸し付けるケースが摘発されています。例えば、売掛債権を買い取ると説明しながら、実際には元本返済や利息の支払いを強要し、法定上限を大きく超える利息を得ていた業者が逮捕された事例があります。契約内容に「返済」や「利息」という文言が盛り込まれている場合は、ファクタリングではなく違法な貸付に該当する可能性が高いため、特に注意が必要です。
給与ファクタリングで出資法違反となった事例
従業員がまだ受け取っていない給与を債権として現金化する「給与ファクタリング」は、実態としては融資にあたり、貸金業法や出資法の規制対象です。過去には給与ファクタリングを無登録で行い、年利換算で法定上限の数十倍もの利息を徴収した業者が摘発されました。給与は労働者に直接支払うことが原則であり、第三者が買い取ることは法律上認められていません。そのため給与ファクタリングは利用自体を避けるべきです。
売掛債権の買い戻しを要求した事例
2018年には、大阪府警が摘発した違法ファクタリンググループが、買い取った売掛債権について「債務者が支払えなかった場合には買い戻すように」と利用者に迫っていた事例が報じられました。ファクタリングでは本来、売掛債権の回収リスクはファクタリング会社が負担します。買い戻しを強制する契約は、実質的に「担保付き貸付」と同じ構造であり、貸金業法違反となります。このような契約条件を提示する業者は、違法性が極めて高いと判断できます。

悪質なファクタリング業者の特徴
ファクタリング自体は合法的な資金調達手段ですが、規制が未整備なことから悪質業者が紛れ込みやすいのも事実です。法人経営者・財務担当者が被害を避けるためには、典型的な特徴を把握しておくことが重要です。
相場を大きく外れた手数料設定
通常のファクタリング手数料は2社間で10〜20%、3社間で1〜9%が目安です。これを大幅に超える30%以上の提示や、逆に「業界最安級」と大幅に安い手数料をうたい、後から事務手数料や名目不明の追加費用を請求する業者は危険です。
会社情報が不透明
住所がバーチャルオフィスや架空のものであったり、連絡先が携帯電話しかない場合は信頼できません。ホームページに代表者名や法人番号、設立年、実績などが明示されていない場合も注意が必要です。実体の確認が取れない会社は契約リスクが高まります。
不当な契約条件の提示
本来、ファクタリングは「債権譲渡」であり、償還請求権や分割返済は存在しません。これらを契約条件に入れようとする業者は、事実上「融資」と同じ構造で貸金業法違反の可能性が高いです。また、売掛債権の「買い戻し」を迫る条項を設けるケースも違法性が強い典型例です。
担当者の対応が不誠実
以下のような対応が見られる場合は要注意です。
- 契約書の提示を渋る、内容が曖昧で修正を繰り返す
- 手数料や費用の内訳を質問しても明確に答えない
- 電話やメールだけで済ませ、対面を避ける
- 口コミで「高額請求された」「対応が横柄」などの具体的な不満が多い
こうした業者は、利用者の資金繰りの急ぎにつけ込み、強引な契約を迫るケースが目立ちます。

優良なファクタリング会社を見極めるポイント
ファクタリングは正しく利用すれば経営を支える有効な資金調達手段ですが、悪質な業者に当たると経営リスクが一気に高まります。優良なファクタリング会社を見極めるには、以下のポイントを丁寧に確認することが欠かせません。
運営会社の透明性と実績
信頼できる会社は必ず会社概要を公開しています。代表者名、所在地、連絡先(固定電話含む)などの情報が明記され、登記情報や法人番号で確認できることが望ましいです。さらに、運営年数が長く、年間の契約実績や取引件数が豊富な会社は、継続的に利用されている信頼性の証といえます。
契約内容の明確さ
契約書に「債権譲渡契約」と明確に記載されているかを必ず確認してください。ファクタリングは融資ではないため、「返済」「分割払い」「償還請求権付き」といった文言が入っていれば注意が必要です。優良な会社の契約書はシンプルでわかりやすく、不明点についても丁寧に説明してくれます。
手数料の相場内での提示
手数料は業者を見極める重要な指標です。一般的には、2社間ファクタリングで5~20%前後、3社間ファクタリングで1~9%程度が目安です。相場より極端に高い場合は経営を圧迫し、極端に安い場合は隠れた費用を後から請求される可能性があります。見積もり時点で手数料の内訳が明確になっているかも要チェックです。
業界内での評価と信頼性
大手金融機関や上場企業のグループ会社が運営しているファクタリング会社は、社会的信用度が高く安心です。独立系の場合でも、口コミ・評判や専門機関からの認定があるか、金融庁の注意喚起対象になっていないかを確認することで信頼性を判断できます。
対応姿勢とサポート体制
優良な会社は、契約前に丁寧なヒアリングを行い、メリット・デメリットを正直に説明します。さらに、オンライン対応やスピード審査だけでなく、契約後のサポート体制が整っているかも見極めのポイントです。利用者が安心して継続的に取引できる体制が整っているかを重視してください。

ファクタリング利用時に注意すべき点
ファクタリングは、売掛金を早期に資金化できる有効な手段ですが、契約内容や利用方法を誤ると大きなリスクを伴います。法人経営者や財務担当者が安心して活用するためには、以下の点に十分注意する必要があります。
契約内容と費用の確認を怠らない
契約書は必ず隅々まで確認し、不明確な項目や不自然な文言が含まれていないかをチェックしてください。特に「返済」「利息」「償還請求権」など、本来のファクタリング契約には不要な表現が記載されている場合は要注意です。
また、手数料以外に「事務手数料」「調査料」などの名目で過剰な費用が発生しないかも確認する必要があります。
手数料水準と条件の妥当性を確認する
一般的な手数料相場は、2社間ファクタリングで5〜20%、3社間ファクタリングで1〜9%程度といわれています。これを大きく外れる条件が提示された場合は、契約を控えたほうが賢明です。相場より極端に安い手数料を掲げる業者も、別途費用を上乗せするケースがあるため注意が必要です。
取引先への影響を考慮する
3社間ファクタリングでは、取引先に通知・承諾が必要となるため、資金繰りに不安を抱えている印象を与える可能性があります。取引先との信頼関係を重視する場合は、2社間ファクタリングを選択するほうが無難です。ただし、2社間は手数料が高めになるため、コストとのバランスを見極めることが大切です。
複数社を比較して最適な条件を選ぶ
一社だけで即決するのではなく、複数のファクタリング会社から見積もりを取り、条件・手数料・契約内容を比較してください。特に、運営実績や公開されている会社情報、利用者からの口コミを総合的に判断することが重要です。
短期的な資金繰りの補助にとどめる
ファクタリングは便利である一方、手数料負担があるため長期的に多用すると経営を圧迫します。必要な時にスポット的に活用し、資金繰り計画の中で位置づけを明確にして利用することが望まれます。

経営への影響を最小限に抑える利用法
ファクタリングは短期的な資金繰りを改善できる一方で、使い方を誤ると手数料負担が経営を圧迫し、資金調達依存から抜け出せなくなる危険があります。ここでは、法人経営者や財務担当者が経営リスクを抑えながら有効に活用するための実践的な方法を整理します。
スポット利用で資金繰りを安定化させる
ファクタリングを常用するのではなく、入金と支払いのタイミングが一時的にずれた際の緊急対応や、取引先の入金遅延に備える目的で利用するのが望ましいです。計画的に「スポット利用」にとどめることで、資金繰りを安定させながら過度な依存を避けられます。
融資との組み合わせでリスク分散する
資金調達をすべてファクタリングに頼るのではなく、銀行融資や信用保証付き融資と組み合わせることで調達コストを分散できます。融資は調達まで時間がかかるものの低コストで安定しているため、短期はファクタリング、長期は融資というように使い分けることが合理的です。
キャッシュフロー計画に基づいて利用する
利用前に月次・週次のキャッシュフロー計画を立て、資金ショートが予測されるタイミングを把握してから申請することが大切です。行き当たりばったりで繰り返し利用すると、手数料が累積し利益を圧迫するため、あくまで「計画ありき」の利用を徹底してください。
定期的にコストと効果を検証する
ファクタリングを利用した後は、資金調達コストと売上・利益への影響を数値で確認することが重要です。例えば「手数料が利益の何%を削ったか」「代替調達手段と比較して有利だったか」を検証し、必要に応じて利用頻度や取引先を見直しましょう。定期的なモニタリングにより、ムダなコストを防ぐことができます。

信頼できる代表的なファクタリング会社例
ファクタリングを安全に利用するには、実績や信頼性の高い会社を選ぶことが欠かせません。ここでは、法人経営者や財務担当者が安心して活用できる代表的な事業者を紹介します。
GMO BtoB早払い
GMOインターネットグループが提供するサービスで、業界でも最低水準の手数料(1%〜)が特徴です。請求書発行前の段階から利用でき、スピーディーな資金調達を可能にします。大手グループの信頼性もあり、導入企業のリピート率が高い点も安心材料です。
OLTA
国内初のオンライン完結型ファクタリングを展開する企業です。申し込みから契約、入金まで全てWebで完結でき、手続きの効率性に優れています。償還請求権がなく、利用者がリスクを負わない契約形態を採用しているため、中小企業や個人事業主から高い支持を得ています。
ビートレーディング
全国対応で、2社間・3社間どちらにも対応可能な大手独立系ファクタリング会社です。累計取引実績が7万社を超えており、幅広い業種で利用されています。クラウドサインを導入しているため、非対面での契約も可能で、即日調達にも対応できる柔軟性があります。
日本中小企業金融サポート機構
一般社団法人として設立され、営利目的ではなく中小企業支援を目的に活動しています。関東財務局や経済産業局から「経営革新等支援機関」として認定されており、制度的な信頼性が高い点が特徴です。金融庁や中小企業庁の施策とも親和性があり、安心感を重視する経営者に向いています。

ファクタリングを安全に活用するためのまとめ
ファクタリングは、売掛債権を早期に現金化できる有効な資金調達手段ですが、仕組みを誤解したり悪質な業者と契約してしまうと、経営リスクを抱える危険性があります。安全に活用するためには、いくつかの重要な視点を押さえる必要があります。
違法業者を避けるための理解
違法業者は「融資」と同様の契約を装って高額な手数料や分割返済を求めてきます。契約書に「償還請求権」や「返済」という表現が含まれていないかを必ず確認してください。違法な給与ファクタリングや買戻し要求をしてくる業者は典型的な例であり、契約前に除外すべき対象です。
契約内容と会社情報の精査
優良なファクタリング会社は、会社所在地・代表者・連絡先・契約実績などを公開しています。契約書も「債権譲渡契約」と明記され、手数料や条件がシンプルかつ透明です。相場から大きく外れた条件を提示する業者は、避けることが安全につながります。
資金調達戦略の一部として活用
ファクタリングは、資金ショートを回避するための「補助的な手段」と位置づけるのが適切です。融資や助成金、内部資金と組み合わせて利用し、過度に依存しないようにしてください。キャッシュフロー計画に組み込むことで、安定した経営判断につながります。
定期的なコストと条件の見直し
ファクタリング利用後も、定期的にコスト構造や資金調達条件を振り返りましょう。手数料や資金調達スピードが業界水準と比べて妥当かどうかを検証し続けることが、長期的に健全な資金繰りを維持する鍵になります。
