と、国際ファクタリングに対して疑問を持つ経営者の方も多いかと思います。今回は国際ファクタリングの仕組み、メリットデメリットについて解説します。
国際ファクタリングとは?
国際ファクタリングとは
を言います。
輸出企業にしてみれば、海外の企業に輸出をすると「代金回収がきちんとできるのか?」という大きなリスクを抱えることになります。
日本の企業同士の取引であれば、相手の会社の信用情報や帝国データバンク等の民間調査会社の情報を起業担当者が入手することも難しくありませんし、万が一支払いがない場合は、相手の会社に行って、支払いを催促することもできます。最悪の場合は、訴訟を起こすことも難しいことではありません。
日本企業同士であれば「与信」は比較的簡単にできるのです。
しかし、取引相手が海外の企業となれば
- 日本語が通じない
- 海外の企業の信用情報は入手しにくい
- 海外の企業の倒産リスクは把握しにくい
- 万が一支払わない場合にどう催促すれば良いのか?わからない
- 万が一支払わない場合に現地に行くわけにもいかない
・・・
と「代金回収」のリスクがかなり大きくなってしまうのです。
そこで一般的には貿易取引では「信用状 L/C」(Letter of Credit)を利用した取引が一般的になっているのです。
「信用状 L/C」による貿易取引の仕組み
- 申請者(輸入企業)が現地の銀行に「L/C」発行依頼
- 現地の銀行から日本の銀行に「L/C」発行・送付
- 日本の銀行から受益者(輸出企業)に「L/C」通知
- 受益者(輸出企業)は契約書通りに船積
- 受益者(輸出企業)は「B/L」(出荷を証明する書類)を日本の銀行に提示
- 日本の銀行から受益者(輸出企業)に支払い
解説
貿易取引は輸入企業と輸出企業が売買契約を結ぶことで始まります。
このときに輸入企業と輸出企業は「L/C」の利用を検討します。
輸出企業の「L/C」を使うメリット
- 代金を確実に回収できる
- 船積み後、すぐに代金を回収できる(資金繰りの改善)
輸入企業の「L/C」を使うメリット
- 輸出者は契約通りの船積みをしなければ代金を得られないので契約通りの取引を促せる
- 前払いをする必要がない
という双方のメリットがあるため、「L/C」の利用に合意できるのです。
申請者(輸入企業)は現地の銀行に対して、受益者(輸出企業)宛の「L/C」の発行依頼(開設依頼)をします。
「L/C」の開設銀行は、「L/C」を発行し、申請者(輸入企業)の銀行(通知銀行)を経由して、申請者(輸入企業)に通知されます。
銀行(通知銀行)は申請者(輸入企業)側が指定することも可能です。
受益者(輸出企業)は船積みで契約通りに商品を輸出します。
受益者(輸出企業)は契約通りの船積みを証明する書類(B/Lなど)を銀行(通知銀行)に提示することで銀行(通知銀行)から売買代金の支払いを受けることができるのです。
「信用状 L/C」による貿易取引のデメリット
- 発行銀行の L/C発行手数料が発生
- 手形買取時に割引手数料が差し引かれる
- 船積書類を銀行経由して送付するので書類到着が遅くなる
- 書類に一つでも条件不一致があると、銀行の保証は得られない
- L/C開設の審査が通らない可能性がある
- L/C開設など取引までに時間がかかってしまう
というものがあります。
銀行のサービスに時間がかかるのは、どのようなサービスでも同じなのですが「信用状 L/C」による貿易取引の場合
ということも往々にして起こるのです。
また、悪意ある輸入者の場合、「,」や「.」のほんのわずかな違いを指摘して、て支払を拒絶する(ディスクレ)をすることもあります。
「信用状 L/C」は便利なサービスである一方で
- コスト高
- 時間がかかる
- 荷物の引き取り時に書類がないと引き取りができない
- 確実な支払いが保証されるものではない
といったデメリットもあるのです。
そこで登場したのが「国際ファクタリング」です。
国際ファクタリングの仕組み
- 輸出企業と輸入企業が売買契約の締結
- 輸出企業が輸入企業へ国際ファクタリングを利用することの承諾を得る
- 輸出企業から国内のファクタリング会社へ信用保証の引受依頼
- 国内のファクタリング会社から海外のファクタリング会社へ信用保証の引受依頼
- 海外のファクタリング会社は、輸入企業の信用調査
- 輸入企業の信用調査で問題がなければ、海外のファクタリング会社は信用保証の引受受領を国内のファクタリング会社へ伝える
- 国内のファクタリング会社から輸出企業へ信用保証の引受受領を伝える
- 輸出企業は契約通りに商品を船積み
- 輸出企業は契約通りに商品を船積みをしたことの証明「B/L等」を提出し、国内のファクタリング会社へファクタリングを依頼
- 輸入企業から海外のファクタリング会社へ支払い
- 海外のファクタリング会社から国内のファクタリング会社へ支払い
- 国内のファクタリング会社から輸出企業へ支払い
解説
「信用状 L/C」による貿易取引では「日本の銀行」「現地の銀行」が支払いを保証してくれるスキームでした。
国際ファクタリングでは「日本のファクタリング会社」「現地のファクタリング会社」が支払いを保証してくれるスキームとなっています。
日本の輸出企業は、国際ファクタリングを利用するときには、まず輸入企業の信用調査を依頼します。信用調査の依頼は「輸入企業 → 日本のファクタリング会社 → 現地のファクタリング会社 → 輸出企業」という形になるので、最終的には現地のファクタリング会社が信用調査を行うことになります。
信用調査が問題なければ、国際ファクタリングが利用できるということになりますので、日本の輸出企業は、売買契約書通りに商品の船積みを実行します。船積みを実行した証明書(B/L)を持ち、日本のファクタリング会社に正式にファクタリング申し込みをします。
後は、海外のファクタリング会社が輸入企業から代金の回収を行い、日本のファクタリング会社を経由して、輸出企業へ支払われるのです。
これが国際ファクタリングの仕組みとなっています。
国際ファクタリングのメリット
輸出企業の代金回収が保証される
国際ファクタリングの最大のメリットは、100%確実に輸出企業の売掛債権が保証されるということです。
輸入企業が信用保証の審査に通ってなければ、国際ファクタリング自体を利用できませんが。輸入企業が信用保証の審査に通っているのであれあ、支払は100%保証されるのです。
一般的な国際ファクタリングの場合
- 海外バイヤーの支払いが延滞して90日経過後 → 保証履行
となります。
信用状開設が不要
「信用状 L/C」による貿易取引で「L/C」の開設をするということは、銀行が支払いを保証するということに他なりません。
銀行に融資を受けるときの審査と同じような審査が必要になるのです。
輸出企業側の信用状開設はそれほどハードルは高くないのですが
輸入企業側の信用状開設は
- 支払わない場合には銀行が代わりに支払う必要がある
- 倒産した場合には銀行が代わりに支払う必要がある
ため、どうしても銀行の審査は厳格に行われるのです。
輸入企業側の信用力が不足していた場合、信用状開設ができなくなってしまうのです。
書類送付のディレイが起こらない
「信用状 L/C」による貿易取引では、銀行に「B/L」を提出して、銀行を経由して、輸出企業から輸入企業へ書類が送られます。
近海での貿易の場合は
ということが発生してしまうのです。
一般的には荷物の引き取りは、書類を持って行われるものですので、書類が到着していない状況は荷物の引き取りに支障をきたし、スケジュール全体が遅延してしまうのです。
これも大きなメリットと言えます。
「信用状 L/C」よりは書類が厳格ではない
「信用状 L/C」による貿易取引では「書類取引の原則」があります。
信用状取引は、書類取引ですから、書類が非常に重要な意味を持つのです。
- 信用状と船積書類の内容が一致してさえすれば買取を行う
- 書類のタイプミスを含む不一致(ディスクレ)がある場合は買取を行わない
という非常に厳格な書類の一致を求められるのです。
「,」や「.」のほんのわずかな違いがあるだけで、買取がされないのです。
悪質な輸入企業の場合、「,」や「.」のほんのわずかな違いを指摘して、て支払を拒絶する(ディスクレ)をすることもあります。
万が一、ディスクレが起これば、書類が輸出地へ返送されるので、輸出者は書類を買い戻す必要があるのです。
国際ファクタリングは書類取引ではありませんから、「,」や「.」のほんのわずかな違いで取引ができなくなるものではありません。
輸入企業の与信管理が可能
国際ファクタリングは、単純に一回の貿易取引で、売掛債権(輸出債権)を保証してくれるだけではありません。
国際ファクタリングを利用することで
- 定期的に海外の輸入企業の信用調査ができる
- 新規の取引先の信用調査ができる(新規取引先ごとに保証枠を設定)
ため、自社で与信管理をする必要がなくなるのです。
国際ファクタリングを活用すれば与信管理業務のアウトソーシングができるのです。
「L/C」よりも手間が少なく、効率的な貿易取引が可能になります。
国際ファクタリングのデメリット
ファクタリング手数料が高い
国際ファクタリングの費用相場は
- 信用調査費:1万円程度
- 保証料:インボイス金額に対し0.7~2.0%/月
というのが一般的です。
「L/C」の費用相場は
- 保証料率:0.5~1.0%/年
- 電信料:1万円程度
- 円為替手数料
というのが一般的です。
取り扱っているファクタリング会社が少ない
国際ファクタリングを扱っているファクタリング会社は多くありません。
というのも、一般的には、世界各国の銀行及びその子会社のファクタリング会社で構成されている「Factors Chain International(FCI)」というネットワークを利用して国際ファクタリングは提供されているのです。
つまり、「Factors Chain International(FCI)」というネットワークに参加できるファクタリング会社でないと、国際ファクタリングをサービスとして提供できないので
日本では
- みずほファクター
- 三菱UFJファクター
などの、メガバンクの子会社のファクタリング会社ぐらいしか扱っていないのです。
選択肢の少なさは、デメリットのひとつと言えます。
国際ファクタリングを利用すべきケース
輸入企業が「L/C」に応じないケース
輸入企業が「L/C」の利用に応じないケースも考えられます。「L/C」では輸入企業発信で「L/C」の開設をすすめていくので、「L/C」の利用に応じなければ、直接の送金で取引するしかありません。
しかし、直接の送金では、輸出債権の支払が保証されないため、国際ファクタリングを利用すべきケースとなります。
輸入企業が「L/C」に応じない理由には
- コストが発生する
- 書類の遅延が荷物の引き取りに影響する
- 「L/C」の開設ができない
- 取引に時間がかかる
・・・
というものがあります。輸入企業が「L/C」に同意しないケースも往々にしてあるのです。
また、「L/C」で取引していたのに送金取引へ移行したいといわれることもあります。
送金取引の輸出債権が増加しているケース
少額であれば、輸出企業の社内与信限度額内の取引として、送金取引で進めることもできますが、輸出債権が高額になればなるほど、会社としてはリスクヘッジをしておかないと、輸出債権の貸し倒れが大きな損失につながってしまいます。
このケースでも、国際ファクタリングで送金取引ベースでも、支払を保証してもらう必要があるのです。
与信管理をアウトソーシングしたいケース
海外企業の与信管理は、情報の収集が難しいものです。
- 取引先数が増えてきた
- 世界各国の取引先がある
という場合には、社内の一部署、一担当者が与信管理を効率的に行うことはなかなか難しい状況になってきてしまいます。
この場合は、国際ファクタリングのファクタリング手数料を支払ってでも、与信管理をまるごとアウトソーシングしてしまった方が、コスト削減につながるのです。
まとめ
国際ファクタリングとは
を言います。
貿易取引の支払保証という意味では「L/C」が利用されるケースが多いのですが「L/C」にもデメリットがあるため、国際ファクタリングを利用する企業も増えているのです。
「L/C」のデメリット
- 発行銀行の L/C発行手数料が発生
- 手形買取時に割引手数料が差し引かれる
- 船積書類を銀行経由して送付するので書類到着が遅くなる
- 書類に一つでも条件不一致があると、銀行の保証は得られない
- L/C開設の審査が通らない可能性がある
- L/C開設など取引までに時間がかかってしまう
国際ファクタリングのメリット
- 輸出企業の代金回収が保証される
- 信用状開設が不要
- 書類送付のディレイが起こらない
- 「信用状 L/C」よりは書類が厳格ではない
- 輸入企業の与信管理が可能
国際ファクタリングのデメリット
- ファクタリング手数料が高い
- 取り扱っているファクタリング会社が少ない
国際ファクタリングが効果的なシチュレーション
- 輸入企業が「L/C」に応じないケース
- 送金取引の輸出債権が増加しているケース
- 与信管理をアウトソーシングしたいケース
国際ファクタリングは、貿易取引での輸出債権の確実な支払保証、確実な代金回収ができる選択肢です。
国際ファクタリングは、大手企業のファクタリング業者でないと、取り扱えないため、悪徳業者などはほぼ存在しません。
「他のファクタリングと何が違うの?」