と2社間ファクタリングに対して疑問を持つ経営者の方も多いかと思います。今回は2社間ファクタリングの仕組み、メリットデメリットについて解説します。
2社間ファクタリングとは?
売掛債権を譲渡(売却)して資金調達する一般的なファクタリングサービス(買取ファクタリング)を
- ファクタリングを利用する会社(納入企業)
- ファクタリング会社(ファクター)
の2社間の契約に基づき、行うこと
を言います。
2社間ファクタリングが登場した経緯
一般的なファクタリングサービスというのは「3社間ファクタリング」が基本です。
- ファクタリングを利用する会社(納入企業)
- ファクタリング会社(ファクター)
- 売掛先(支払企業・クライアント)
の3社間の契約です。
しかし、この3社間ファクタリングの場合は
「売掛先(支払企業・クライアント)の同意」
が必要になってしまいます。
なぜならば
「売掛先 = クライアント、発注先」です。
クライアントに
と言わなければなりません。
クライアントとしては
と言ってくれる可能性は高いのですが、腹の中では
と勘ぐられてしまう可能性があるからです。
欧米では、売掛債権を譲渡するファクタリングサービスによる資金調達は、財務的なアウトソーシングの一種として広く認知され、活用されているのですが、日本の商慣習では銀行融資、手形、不動産担保という資金調達方法が一般的であり、債権譲渡ならびにファクタリングというサービスの認知が進んでいない分、間違った印象を与えてしまうリスクがあるのです。
しかし、
制度のポイント
- 債権譲渡登記ファイルに記録することにより,当該債権の債務者以外の第三者について,民法第467条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなされ,第三者対抗要件が具備されます。
- 譲渡人は,法人のみに限定されています。
- 譲渡に係る債権は,指名債権であって金銭の支払を目的とするものに限定されています(債務者が特定していない将来債権も登記することができます。)。
- 債権譲渡登記がされた場合において,譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし,又は債務者が承諾をしたときは,債務者についても確定日付のある証書による通知があったものとみなされ,対抗要件が具備されます。
債権が法務局に登記することができるようになったのです。
- 会社を設立したとき → 法人登記
- 不動産を購入したとき → 不動産登記
- 不動産を担保に住宅ローンを組んだとき → 不動産登記
急に知らない人が自分の土地を「この土地、俺の土地だよ。」と言ってきたとしても、不動産登記をしていれば「いやいや、不動産の登記にも、自分の土地と明記されていますよ。法的な根拠があるのは私です。」と反論することができます。訴えられていても、裁判などで確実に勝てるのです。
このことを「第三者の対抗要件」と言います。
売掛債権の譲渡でも、「第三者の対抗要件」を持つことができる債権譲渡登記制度の設立は非常に大きなことだったのです。
「債権譲渡登記制度」設立以前
売掛先(支払企業・クライアント)の同意がなければ
ファクタリング会社は買取った売掛債権が自分のものと証明することができません。
→ 「売掛先(支払企業・クライアント)の同意」が必須
→ 3社間ファクタリングしか提供できない
「債権譲渡登記制度」設立以後
売掛先(支払企業・クライアント)の同意がなくても
債権譲渡登記をしていれば
ファクタリング会社は買取った売掛債権が自分のものと証明することができる
→ 「売掛先(支払企業・クライアント)の同意」が不要
→ 2社間ファクタリングサービスが提供できる
ことになったのです。
債権譲渡登記をしておけば、ファクタリング会社は「他の債権者から、この売掛債権は俺のだ。」と言われても、「いやいや、登記していますから。」と返すことができます。これが「第三者の対抗要件の具備」なのです。これがないと、納入企業が悪意を持って、2社のファクタリング会社に同じ売掛債権を譲渡していた場合、どちらのファクタリング会社は取っぱぐれてしまうのです。
2社間ファクタリングの仕組み
- 納入企業:商品やサービスの提供
- 納入企業:代金の請求
- 納入企業・ファクタリング会社:債権譲渡契約(ファクタリング契約)
- 納入企業・ファクタリング会社:債権譲渡登記
- ファクタリング会社→納入企業:買取金額の支払
- 支払企業:請求書の支払期日通りに納入企業の口座へ支払い
- 納入企業:入金された売掛金をそのままファクタリング会社の口座へ入金
解説
2社間ファクタリングでは、通常の商取引による請求が発生したのち(売掛債権が発生したのち)に「ファクタリングによる資金調達が必要」と納入企業が判断してから、ファクタリング会社に2社間ファクタリングの申込みを行います。
2社間ファクタリングでは、売掛先(支払企業・クライアント)の同意が不要ですので、ファクタリング会社の審査に通れば、ファクタリング契約の締結になります。
ファクタリング契約の締結後、売掛債権の譲渡登記を行います。その後、ファクタリング会社はファクタリング契約手数料を除いた買取金額を納入企業へ支払います。
売掛先(支払企業・クライアント)は売掛債権が譲渡されたことも知りませんので、請求書通りに納入企業の口座に請求金額を入金します。
納入企業は、一時的に売掛金が入金されることになりますが、これはすでにファクタリング会社へ譲渡済の債権の金額です。ファクタリングを利用した時点で買取してもらっているため、この金額は速やかにファクタリング会社の口座に入金しなければなりません。
ファクタリング契約書では、納入企業は代金回収の業務委託をするような契約となっているため、売掛先からの入金はそのままファクタリング会社へ入金しなければならないのです。
これが2社間ファクタリングの仕組みです。
2社間ファクタリングのメリット
売掛先への通知が不要
これが2社間ファクタリングの最大のメリットです。
前述した通りで「売掛先に債権譲渡を伝える」という行為は、力関係が弱い中小企業、零細企業にとっては「取引停止」「発注減」などのリスクがある行為です。
- 理解のある取引先
- ファクタリングが一般的な資金調達方法であることを理解している取引先
であれば、リスクはありませんが、経営者としては「取引停止」のリスクが少しでもあると思うとなかなか踏み切れないものです。
最短即日の資金化が可能
3社間ファクタリングの場合は「売掛先への通知が必要」ですので、売掛先へアポを取って、説明に行って、承諾書(同意書)を回収するという手順が発生します。売掛先が大企業であればあるほど、確認や決済のフローに時間がかかり、とてもじゃないですが即日の資金化ができないのです。
2社間ファクタリングのデメリット
ファクタリング手数料が高い
2社間ファクタリングは3社間ファクタリングと比較してファクタリング手数料が高く設定されています。
ファクタリング手数料は売掛先の信用力やファクタリングの利用実績などに応じて変動しますが、概ね相場は
ファクタリング手数料相場
- 3社間ファクタリング:1%~5%
- 2社間ファクタリング:6%~40%
となっていますので、2社間ファクタリングの方がファクタリング手数料が高いというデメリットがあるのです。
3社間ファクタリングであれば、売掛先が大手企業だとした場合、ファクタリングを申込んできた「納入企業」が倒産しても、ファクタリング会社は痛くもかゆくもなく、買取った債権の金額は売掛先からファクタリング会社に口座に直接入金されます。
売掛先が倒産した場合には貸し倒れになるリスクがあるのですが、限りなくリスクは低いと言っていいでしょう。だから、ファクタリング手数料も安いのです。
一方で、2社間ファクタリングの場合は、売掛債権は一時的に納入企業に支払われてしまうのです。
このときに
- 他の支払に遣ってしまった。
- 自動的に口座振替で引き落とされてしまった。
- 請求が厳しい返済に充ててしまった。
・・・
と、経営者が別の資金に利用してしまうトラブルも跡が立たないのです。その上で、倒産されてしまったら、ファクタリング会社は1円も入ってきません。貸し倒れになってしまうのです。
※最近では、銀行業の免許を持つ大手企業が2社間ファクタリングに参入してきています。2社間ファクタリングでも、専用口座を発行して、使い込みリスクを失くして、ファクタリング手数料を下げることを実現しています。
大手のファクタリング業者はこちら
大手企業は2社間ファクタリングを提供していない
前述した通りで、2社間ファクタリングのファクタリング手数料は
- 2社間ファクタリング:6%~40%(1カ月~2カ月)
ですから、売掛先の信用力によっては、貸金業法でいう利息制限法の年率18.0%を超えてしまっているのです。
ですので、「貸金業法は関係ない」のですが、ファクタリングが貸金に該当するかどうかの明確な定義はなく、将来的に規制されてしまうリスクもあるため、大手企業、大手企業の子会社のファクタリング会社は、2社間ファクタリングの提供に及び腰なのです。
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個人事業主は利用できない
「売掛債権の譲渡登記」は、法人しか利用できない制度です。
3社間ファクタリングであれば「売掛債権の譲渡登記」は不要ですので、売掛債権があって、売掛先の同意さえ得られれば、個人事業主、自営業者でも利用することができます。
最近では、個人事業主が利用できる2社間ファクタリングも増加しています。
3社間ファクタリングよりは、2社間ファクタリングの方が審査は厳しい
前述した通りで
貸し倒れリスク
- 3社間ファクタリング < 2社間ファクタリング
ですので、貸し倒れリスクが大きいということは、それだけ審査も慎重になることを意味します。
審査の厳しさ
- 3社間ファクタリング < 2社間ファクタリング
となるのです。
2社間ファクタリングでは「納入企業」の経営者の信頼性が重視される!?
2社間ファクタリングでも、3社間ファクタリングでも、
売掛先の信用力
がファクタリング審査の中で大きなウェイトを占めることは間違えありません。
しかし、2社間ファクタリングの場合は「納入企業」の経営者の信頼性も重視されるのです。
というのも、前述した通りで
2社間ファクタリングの場合は、売掛先からの入金は一旦「納入企業」に入金されるからです。
経営者に悪意があれば
- 他の支払に遣ってしまう。
- 自動的に口座振替で引き落とされてしまった。
- 取り立てが厳しい返済に充ててしまう。
- 税金の納税資金として遣ってしまう。
・・・
と、別の支払に使いこむことができてしまうのです。
実際にこのようなトラブルは2社間ファクタリングでは良く発生しているのです。
だからこそ、ファクタリング会社が2社間ファクタリングを提供する場合は、面談審査で経営者の信頼性をチェックするのです。
この審査は、信用情報や決算書というものではなく、「人として信頼できるか否か?」ですので「面談する」「対面で話をする」必要があるのです。
この経営者の信頼性が2社間ファクタリングでは重要になるので
これも2社間ファクタリングだけの大きな特徴です。
まとめ
2社間ファクタリングとは
- ファクタリングを利用する会社(納入企業)
- ファクタリング会社(ファクター)
の2社間の契約で行う、売掛債権買取型のファクタリングサービスです。
2社間ファクタリングのメリット
- 支払企業から承諾を得る必要がない
- 支払企業から承諾が今後の取引にマイナスの影響がでてしまう可能性もない
- 最短即日の資金化ができる
2社間ファクタリングのデメリット
- ファクタリング手数料が高い
- ファクタリング審査が通りにくい
- 大手のファクタリング会社はサービス提供していない
- 個人事業主は利用できない
というものがあります。
- 中小企業、零細企業でクライアントに債権譲渡を知られたくない
- 「売掛先から債権譲渡の同意を得ること」に今後の取引に対するリスクを感じる
- 即日で資金が必要
という方には2社間ファクタリングがおすすめです。
- 大手企業のファクタリング会社を利用したい
- ファクタリング手数料を安くしたい
- 個人事業主でもファクタリングを利用したい
という方には3社間ファクタリングをおすすめします。
「他のファクタリングと何が違うの?」