今回は「ファクタリングの意味がわからない」という方にどこよりも優しく図解で解説しました。
ファクタリングの言葉の意味
ファクタリングは英語では「factoring」と書きます。
「factoring」は「factor」から派生した言葉です。
「factor」には
- 因数分解
- 要因
- 要素
- 代理人
と言った意味があるのです。
日本語でも、カタカナ英語として「ファクター」というのはビジネスを中心に利用されています。コンサルタントや経営層が良く使う言葉です。
- 「リスクファクターを洗い出せ。」
→ 「リスクの要因となるものを洗い出せ。」 - 「重要な経済ファクターを見落としているために景気が良くならない。」
→ 「重要な経済を成り立たせている要素を見落としているために景気が良くならない。」
という意味になります。
「factoring(ファクタリング)」の場合はどういう意味になるの?
「factor」の「要素」という意味に引っ張られてしまうと「factoring」の意味を見失ってしまいますが、「factor」には代理人という意味もあるのです。代理人という意味で「factor」は使われます。
ビジネスで利用される「factoring(ファクタリング)」では
を意味します。
売掛債権の買取サービスとは?
売掛債権の意味
を言います。
日本では、BtoBの取引(企業間の取引)では「掛け取引」が主に用いられています。
掛け取引とは
- 先に、商品やサービスを提供する
- 後から、代金の請求をする
一種の信用取引のことです。
BtoBの会社で働いた経験がある方なら
- 納入業者:商品やサービスを納品する
- 顧客:納品されたものを検収する(チェックする)
- 納入業者:請求書を送る
- 顧客:請求書の支払い期限までに納入業者に代金を入金する
という業務フローを経験された方が多いかと思います。
という会話は「掛け取引」を表したものです。
欧米ではデポジット(前払い)が浸透しているのですが、日本では先に商品やサービスを提供して、後から代金を請求する「掛け取引」が浸透しているのです。
factoring(ファクタリング)とは
を言うのです。
「factoring」には因数分解という意味もありますが、納入企業と顧客という2社の登場人物の間に、第三者の企業が入って、支払いの流れを分解することにつながっているのです。
なぜ、factoring(ファクタリング)というサービスが必要になるの?
「掛け取引」では、企業によって違いはありますが概ね
- 月末締め翌月末支払い
- 月末締め翌々月末支払い
が一般的です。
下請法(第2条の2)
下請け代金の支払い期日は、給付受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定めなくてはなりません。
※発注企業:資本金3億円超の法人、受注企業:個人又は資本金3億円以下の法人の場合に下請法が該当します。
とされているので、それに近い設定が根底にあるのです。
- 月末締め翌々月末支払い
のケースでは
- 1月1日に商品を納品して
- 1月31日に顧客が納品を締めて
- 3月31日に支払いが発生する
という流れになります。
商品を納品する前に仕入れているのですから、仕入れの費用発生したのは1月1日よりも前になります。
会社経営では赤字になったときに倒産するのではなく、資金が尽きたときに倒産します。掛け取引によって先に支払いが発生すると資金繰りが悪化し、最悪の場合は黒字倒産になってしまうのです。
資金繰りの悪化を回避するために「顧客へ請求した請求書の支払いが実行される前に、売掛債権を第三者の企業に売却して、今すぐ現金を手に入れたい。」というニーズが発生するのです。
ファクタリングの意味を図解して説明する
登場人物
- 納入企業:商品やサービスを納入する企業のこと
- クライアント:商品やサービスを受け取る(代金を支払う)企業のこと。売掛先とも言う
- ファクタリング会社:ファクタリングサービスを提供している企業のこと。ファクターとも言う
1.納入企業が仕入れた商品をクライアントに納品する
納入企業が700万円で仕入れた商品を1,000万円で売却して300万円の利益が出るような取引だと想定します。クライアントは納品された商品に瑕疵がないか?チェックして検収をします。受領書や検収書などを発行する企業もあります。「受け取った」という証拠です。
2.クライアントの受領が確認されたら、請求書を発行する
クライアントが「納品、問題ないよ。」と確認してもらったら、納入企業はクライアントへ請求書を送ります。請求書には金額1,000万円、支払期限は月末締め翌々月末払いと、クライアントから指定がありました。
請求書の支払期限は両者の同意のもと決定しますが、大抵は「お金を支払うクライアント」の方が交渉の力関係が強く、「うちの会社は月末締め翌々月末払いだから。」と言っているクライアントに対して「前払いでお願いします。」と交渉するのはかなり難易度が高く、納入企業側の商品やサービスに圧倒的な力がなければ、交渉が成立しないのが一般的です。結局、クライアントの都合の良い支払い期日で請求書を送ることになります。
ただし、すでに700万円の支払いが商品の納入前に発生しているのです。入金がなく、支払いが先行して700万円は払ってしまっているため、さらにここから60日後の入金となると、会社の規模によっては資金繰りの悪化が懸念されるのです。経営者は債務超過を回避しなければならないため、資金繰りをしなければならないのです。
3.ファクタリングを検討する
納入企業の経営者が、60日後の入金だと会社の資金繰りが追い付かないと判断して「売掛債権の譲渡(ファクタリング)」を検討します。
ファクタリング会社に「いくらで買取れるか?(≒ファクタリング手数料がいくらになるか?)」見積もりを依頼します。
ファクタリング会社は
- 売掛債権の金額
- 売掛先(クライアント)の信用力
- 納入企業と売掛先との取引関係
・・・
などを加味して、ファクタリング手数料を決定します。
今回は、ファクタリング手数料5%という審査結果だったため、ファクタリング会社は納入企業の経営者に「ファクタリング手数料5%で良ければ買い取れますよ。」と提示します。
納入企業の経営者は
- 700万円で仕入れて1,000万円なら300万円の利益
- 700万円で仕入れて950万円なら250万円の利益
と考えるならば、そのままファクタリング会社にファクタリングをお願いすることになります。
ファクタリング会社と正式な売掛債権譲渡の契約書を交わせば、すぐに納入企業の銀行口座に950万円の現金が振り込まれます。
3社間ファクタリングの場合は、クライアントに売掛債権譲渡通知を送って、請求書の入金先が納入企業の口座から、ファクタリング会社の口座に変わることを通知し、承諾を得ます。
4.ファクタリングの結果
元々の請求書の支払期日に、クライアントはファクタリング会社に1,000万円を支払います。
ファクタリング会社にとっては、先に資金を提供しましたが、手数料として50万円分の利益が出たのでビジネスとして成り立ちます。
納入企業にとっても、早期に資金化ができたので資金繰りの危機を脱することができるメリットがあります。
クライアントは、支払う金額も、支払う期日も同じなので、メリットもデメリットもありません。入金先の口座が変わるだけです。
この取引のことを「ファクタリング」と呼ぶのです。
ここでは詳しく解説しませんが、ファクタリング会社のほとんどは「ノンリコース」です。ファクタリングと似たものに「手形割引」というサービスがありますが、これは期日前の手形を銀行に売却することで代金を得るものです。「手形割引」の場合、手形発行したクライアントが倒産してしまった場合、銀行に手形割引で受け取った代金を返還しなければならない義務が発生します、「リコース」と言います。
しかし、ファクタリングの場合は「ノンリコース」ですので、売掛債権を買取ってもらってから、売掛先が倒産したとしても、ファクタリング会社に受け取った代金を返還する義務がありません。ファクタリングは「売掛先の倒産リスク」も回避できるのです。
ファクタリングには色々な種類がある
前述した例は「買取ファクタリング」の3社間ファクタリングと呼ばれるファクタリングの種類になります。各ファクタリングサービスの種類についても解説します。
ファクタリングの種類はこちら
買取ファクタリング
売掛債権を買取る形の一般的なファクタリングサービスのことです。
3社間ファクタリング
売掛債権の譲渡をクライアントに通知して、同意を得てから契約する買取ファクタリングのことを「3社間ファクタリング」と呼びます。クライアントに売掛債権譲渡の同意をもらうことで、直接クライアントからファクタリング会社の口座に入金されるため、ファクタリング会社のリスクは少なく、比較的安いファクタリング手数料で利用することができます。
2社間ファクタリング
納入企業の経営者の中には「クライアントに売掛債権譲渡を知られたくない。」と考える方も多くいます。日本ではファクタリングサービス自体の理解が進んでいないため、クライアントに「ファクタリング=売掛債権を譲渡しなければならない差し迫った経営状態」と勘繰られてしまい、今後の営業取引に支障が出ると考える経営者も多いからです。
このようなケースで、クライアントへは通知せずにファクタリングを利用する「2社間ファクタリング」が利用されます。2社間ファクタリングの場合はクライアントへ知られることなく、売掛債権譲渡が可能になりますが、その分、ファクタリング会社のリスクも大きくなり、ファクタリング手数料は3社間ファクタリングよりも高く設定されるのです。
医療報酬債権ファクタリング
企業間取引の請求書は長くても、月末締め翌々月末支払いですので、2カ月ですが、診療報酬・介護報酬の場合はさらに長い3カ月ほどのタイムラグがあります。これを回避するために医療機関(病院、クリニック、歯科)や介護施設もファクタリングを利用するのです。医療機関や介護施設が利用するファクタリングサービスのことを「医療報酬債権ファクタリング」と呼びます。
保証ファクタリング
買取ファクタリングは「売掛債権の買取」でしたが、保証ファクタリングは「売掛債権の保証」をするサービスです。売掛先(クライアント)が売掛金を支払う前に倒産してしまった場合に、売掛金を支払ってもらうサービスです。
建設業界などは、建物ができるまで何カ月、何年というスパンの期間がある業界で利用されます。建設業界では、入金される前にクライアントが倒産してしまうことも少なくないのです。そこで、売掛債権を譲渡するのではなく、保有したまま保証だけしてもらうファクタリングサービスがあるのです。利用する企業はファクタリング会社に保証料を支払うことになります。
国際ファクタリング
海外の企業との取引で利用するファクタリングサービスです。日本国内の企業であれば、帝国データバンクや信用情報機関などを利用したり、会社情報を集めれば、取引先の信用力や支払い能力をある程度は調べること(与信)が可能です。しかし、これが海外の企業になるとかなり信用調査の難易度は格段に上がります。
そこで、ファクタリング会社に海外企業の売掛債権の代金回収を代行してもらうサービスが登場したのです。これが「国際ファクタリング」です。主にメーカーなどの輸出企業が海外の企業へ納品するときに、利用し、輸出債権の決済を保証してもらう「保証ファクタリング」がメインです。
でんさいファクタリング
売掛債権ではなく、電子債権を買い取るファクタリングが「でんざいファクタリング」です。全国銀行協会が設立した電子債権記録機関である全銀電子債権ネットワークで取引するのが「電子債権(でんさい)」であり、手形の代わりに使われることを意図したものです。しかし、現状は思った以上に普及していません。
納入企業から見たファクタリングのメリットデメリット
ファクタリングのメリット
- 早期に資金化できる
- 継続利用すればキャッシュフローが常に改善する
- 代金回収業務、信用調査業務をアウトソーシングできる
- 保証ファクタリングの場合は、売掛先倒産による未回収リスクを回避できる
- 売掛先が倒産しても、返金する義務はない(ノン・リコース)
- 2社間ファクタリングの場合はクライアントへの債権譲渡通知は不要
ファクタリングのメリットはこちら
ファクタリングのデメリット
- 3社間ファクタリングの場合はクライアントへ債権譲渡通知が必要
- クライアントに譲渡通知をする場合は今後の営業取引に支障がある可能性もゼロではない
- 2社間ファクタリングを提供しているファクタリング会社は中小企業が多い
- ファクタリング手数料が発生する
- ファクタリング会社によっては掛目を設定していて、売掛債権額、全額の買取ができない可能性がある
ファクタリングのデメリットはこちら
まとめ
ファクタリングとは
と言えます。
ファクタリングは、参入しやすい業種なので、悪徳業者も少なくありません。優良なファクタリング業者はこちら
「ファクタリングってどのようなサービスのことなの?」