【注意】ファクタリング契約/ファクタリング契約書の注意点

man
「ファクタリング契約の前に注意しておくべき事項って何があるの?」
「ファクタリング契約書を交わす前にどこをチェックすべき?」
「ファクタリング契約書ってどんなもの?」

ファクタリングを利用することを検討している経営者の方にとって、ファクタリングは馴染みのない資金調達方法であり、売掛債権担保融資などでファクタリング業者が逮捕されたニュースなどもあるのですから、ファクタリングが有効な資金調達方法であることを理解していても「契約前に何を注意すればいいのか?」というのは大きなポイントになります。今回はファクタリング契約/ファクタリング契約書の注意点について解説します。

ファクタリング契約書の前提

多くのファクタリング業者の場合

  1. ファクタリング取引契約書:総合的なファクタリング契約の取り決め
  2. ファクタリング個別の覚書・契約書・申込書:案件ごとの債権譲渡契約

と2つの契約書を交わすことが一般的です。多くの企業がファクタリングを一回だけ利用するというのではありませんから、継続利用の時に毎回ファクタリング取引契約書を交わすとなると手間も大きくなるため、はじめに総合的な取引契約書を2社間で締結したら、後は案件ごとに覚書や申込書などで対応するのが一般的です。

また、この他に

  • 3社間ファクタリング:3社間の契約書
  • 2社間ファクタリング:売掛金回収の業務委託契約書

などを作成するケースがあります。

ファクタリング取引契約書のテンプレートと解説、注意点

  • 甲:ファクタリングを利用する会社
  • 乙:ファクタリング業者

第1条

(定義)

本契約において「ファクタリング」とは、取引先信用調査、債権管理回収、信用の危険負担、および債権の期日前資金化ならびにこれらに付随する事務の総合引受をいう。

解説

ファクタリングというのは売掛債権の譲渡を目的として実行する方がほとんどですが、債権譲渡だけに留まるサービスではありません。ファクタリングは売掛債権の譲渡はもちろん、債権管理、売掛先の与信審査なども、ひっくるめたサービスを意味するのです。欧米では債権回収部門のアウトソーシング先としてファクタリング業者が利用されているのです。

その定義が第1条では書かれています。

注意点

とくになし

第2条

(本契約の目的および対象となる債権の範囲)

  • 乙は本契約の定めるところにより、甲のためにファクタリングの全部または一部を行う。
  • 本契約の対象とする売掛債権・手形は甲と乙との間において別に定める。
  • 本契約の対象となる売掛債権・手形は、甲が営業上の取引を原因関係として取得したものに限る。
解説

ここで記載されているのは、この契約はファクタリング契約の総合的な契約であって「どの債権をいくらで譲渡するのか?」等は別の契約書・申込書・覚書などで定めるという意味になります。ファクタリング契約は1回1回個別に締結するのは面倒なので、このような総合的な契約書を交わしたうえで、案件ごとの契約を行うのが主流です。

また、「本契約の対象となる売掛債権・手形は、甲が営業上の取引を原因関係として取得したものに限る。」というのは、債権の買取で得た売掛債権は対象にならないということです。あくまでも、営業行為の対価として直接得た売掛債権が対象になるということです。

注意点

債権譲渡の個別の契約書・覚書をこの契約書とは別に交わすことになるため、個別の契約書に関しても注意すべき点があります。

個別の契約に関しては

  • 契約日
  • 債権者
  • 債務者
  • 債権額
  • 買取額
  • 債権の発生原因
  • 弁済の期日
  • ファクタリング手数料
  • 入金期日(買取期日)

などが記載されます。

ここで明確にすべきことは

  • 全額買い取ってくれるのか?
  • 手数料を除くといくら入ってくるのか?
  • ファクタリング手数料はいくらか?

です。

ファクタリング手数料が高ければ高いほど、手取りは少なくなってしまいますので、ファクタリング手数料が希望に沿わない、相場に対して高いのであれば契約する前に他のファクタリング業者に依頼する必要があります。相場自体がわからない場合は他のファクタリング業者に見積もり依頼をしてみると良いでしょう。ファクタリング手数料の交渉材料にもなります。

第3条

(類似契約の協議)

甲が乙以外のものと、本契約類似の契約を締結しようとするときは、本契約によるファクタリングの効果の達成を妨げられないことを確認するため、甲はあらかじめ乙と協議し、その書面による同意を得る。

解説

他のファクタリング業者とファクタリング契約をするときに協議することを要望している文言です。ファクタリング業者としては「2重契約」を危惧しているのです。

注意点

「どのようなケースを想定しているのか?」ヒアリングしておくと良いでしょう。2重で売掛債権を譲渡するなどをしない限りは他のファクタリング業者と契約することに問題はありませんが、何を持って「本契約類似の契約とするのか?」確認すべきですし、この条項は外すことを要望しても良いものだと考えます。

第4条

(売掛債権・手形の譲渡)

  • 乙にファクタリングを依頼する売掛債権については、甲は債務者より債権譲渡の承諾をとりつけ、確定日付のある承諾書を添付して乙に譲渡する。ただし、債務者承諾書の提出については甲と乙の協議によって、これを猶予するかまたは他の方法に代えることができる。この場合、乙は都合によりいつでも、その猶予を取り消すことができる。
  • 乙にファクタリングを依頼する手形については、乙は甲に対して裏書譲渡する。
  • 乙は譲渡を受けた売掛債権・手形につき、甲に対して当該債務者・手形支払義務者の信用危険を負担しない。
解説

ここでは3社間ファクタリングの説明として、「債務者より債権譲渡の承諾をとりつけ」という記載があります。売掛先の承諾を得ることを意味しています。

しかし、「これを猶予するかまたは他の方法に代えることができる。」というのは2社間ファクタリングなども対応可能ということを意味していて、縛りを緩くしているのです。

また、「甲に対して当該債務者・手形支払義務者の信用危険を負担しない。」というのは、ノンリコースであることを意味しています。「売掛先が倒産しても、責任は問わないよ。」ということです。

注意点

再確認として

  • 2社間ファクタリングが可能かどうか?
  • ノンリコースであるかどうか?

は契約書から読み取れない場合、「契約書のどこに書いてあるのか?」ファクタリング業者にヒアリングすると良いでしょう。

第5条

(売掛債権・手形の管理回収、支払方法及び報告)

  • 乙は前条により甲から譲渡をうけた売掛債権、手形の代金を乙所定の手続きにより乙の名において管理回収を行い回収その取立、回収金相当額を甲に支払う。
  • 乙は手形を取り立てるにあたり金融機関に依頼して取り立てるものとし、直接債務者に請求しあるいは裁判手続きによって取り立てることを要しない。
  • 売掛債権回収にあたり乙が前条第1項ただし書により、債務者承諾書の提出を猶予している場合には、甲が乙に代わって管理回収を行い回収した現金または手形を乙に持参する。
解説

ここは買取手数料のことがかかれています。

重要なのは「債務者承諾書の提出を猶予している場合には、甲が乙に代わって管理回収を行い回収した現金または手形を乙に持参する。」という点です。

  • 債務者承諾書の提出を猶予している場合 = 2社間ファクタリングの場合
  • 甲が乙に代わって管理回収を行い = 甲に直接売掛金が振り込まれるので
  • 現金または手形を乙に持参する。 = 振り込まれた売掛金は速やかにファクタリング業者に送金する

ということを意味しています。

注意点

とくになし

第6条

(融資)

  • 甲がファクタリングを依頼している売掛債権、手形の支払期日前に甲が乙に資金化を申し出て乙がこれを承認した場合には、甲は別に定める範囲および方法によって乙より融資を受けることができる。
  • 融資は買取又は貸付の方法により行う。
  • 前項にいう買取とは、乙が甲より譲渡を受けた売掛債権・手形の代金をその支払期日前に甲に対して支払うことをいう。
  • 本条第2項にいう貸付とは、乙が甲より譲渡を受けた売掛債権・手形の合計額の範囲内で甲に対して資金を貸し付けることをいう。
  • 前項により甲が乙から貸付の方法により資金化を受けた場合、乙が譲渡を受けている売掛債権・手形はすべて、その借入金の担保としておるに譲渡されたものとし、乙は売掛債権並びに手形上の一切の権利を行使することができる。
  • 甲は融資金額に対して別に定める割合、方法によって乙に買取料、ファクタリング料、または利息を支払う。
解説

ここではファクタリングではなく、売掛債権担保融資の内容が記載されています。「売掛債権・手形の合計額の範囲内で甲に対して資金を貸し付ける」というものになっています。

注意点

融資の場合は、明確に「利息制限法」の規定された金利を設定することはできません。

  • 10万円未満:年率20.0%
  • 10万円~100万円未満:年率18.0%
  • 100万円~:年率15.0%

ビジネスローンやカードローンも、これを超える金利には設定されます。「ファクタリング」自体は「融資なのか?」定義が定まっていないため、利息制限法が適用されるのかどうかもグレーな状態ですが、「売掛債権担保融資」の場合は明確に「融資」であるため利息制限法が適用されます。

前述した利息制限を超えた「売掛債権担保融資」を持ちかけられた場合は悪徳業者の可能性が高いので契約を見送ることをおすすめします。

第7条

(手数料)

甲は本契約によるファクタリング取引の報酬として、第4条第1項および第2項により乙に譲渡した売掛債権・手形額面に対し、その譲渡時に、別に定める割合を持って手数料を乙に支払う。

解説

手数料の記載です。売掛債権の額面に対する割合でファクタリング手数料が決まります。

注意点

手数料の%をチェックする必要があります。この契約書自体には手数料の記載はありませんが、別途交わす契約書や覚書、申込書などには手数料の記載があるはずですので、今一度手数料率を確認しましょう。

他のファクタリング業者と比較して手数料が安いのか?高いのか?相場を抑えておく必要があります。

  • 3社間ファクタリング:1%~5%
  • 2社間ファクタリング:10%~20%

あとは、売掛先の信用力によって変動します。

第8条

(承諾通知の方法)

  • 第4条に定める売掛債権の譲渡に関する債務者の承諾は別に乙が制定する用紙によって項の責任においてとりつけるものとする。
  • 第4条第1項ただし書に基づき他の方法で取り扱った場合において乙の要求があったならば当該売掛債権の債務者に対して民法所定の確定日付のある債権譲渡通知を発送するものとする。この場合、甲は通知書控及び配達を証する書面をただちに乙に提出するものとする。
解説

3社間ファクタリングの場合に、売掛先から入手する承諾書はファクタリング業者が用意したものを使います。ということです。要望があれば「民法所定の確定日付のある債権譲渡通知を発送」で対応できるということです。2社間ファクタリングであれば不要です。

注意点

3社間ファクタリングを利用する場合には「売掛先=クライアント」ですから

  • 「どんな形で承諾書が届くのか?」
  • 「ファクタリング業者が説明してくれるのか?」
  • 「ファクタリング業者は売掛先と会って説明するのか?」
  • 「申込む会社が説明する必要があるのか?」
    ・・・

クライアントへの説明は、理解のあるクライアントだったとしても、気を使う必要があります。丁寧に説明しておかないと「経営がやばいのか?」と思われてしまい、今後の取引に支障が出る可能性があるからです。「どう通知するのか?」は確認しておくべき事項です。

第9条

(債権と手形の返還)

  • 乙が甲に対して債務者・手形支払義務者の信用危険を負担していない売掛債権・手形については、それぞれの支払期日に、全部または一部の支払が拒絶された場合は当然に、もしくは支払期日到来前であっても拒絶される恐れがあると認められた場合には乙の請求によって、その原因が債務者・手形支払義務者の支払能力に関するものであると、否とにかかわらず甲はただちに当該売掛債権・手形ならびにこれ等と債務者・手形支払義務者を同じくする他の売掛債権・手形を受け戻す義務を負う。
  • この時乙は売掛債権・手形を甲に返還する。
  • 本条第1項に紛争が生じたときは乙が自己の費用によってその解決にあたる。
解説

「債務者・手形支払義務者の信用危険を負担していない売掛債権・手形」というのは、基本的にはファクタリングはノンリコース(償還請求権なし)が前提となっています。しかし、「償還請求権あり」の状態でファクタリングを利用する「融資」の場合であれば「支払いが行われなければ債権や手形はそのまま返還するよ。」という意味です。

注意点

とくになし

第10条

(資金の返還)

  • 甲が第6条第1項により乙より融資を受けた売掛債権・手形について第9条第1項により甲に受戻義務が生じた場合には、甲は債権・手形の返還を受けると同時に当該融資金を乙に弁済する。
  • 第15条の場合において、甲は売掛債権・手形の返還を受けると同時に融資金を乙に弁済する。
解説

前述したように「融資」は「償還請求権あり」ですから、支払いが行われない場合にファクタリング業者は債権を返還します。このときに「債権も返すんだから、融資したお金も返してよ。」ということです。

注意点

とくになし

第11条

(遅延損害金)

甲は乙に対する債務の履行を延滞した場合には、延滞の日から弁済または支払うべき金額に付して年18%の割合の損害金を支払う。
この場合の計算方法は年365日の日割計算とする。

解説

「ファクタリング」ではなく「融資」の場合には返済義務がありますから、返済が遅延した場合には遅延損害金が発生します。

注意点

とくになし

第12条

(債務者・手形支払義務者に関する報告義務)

甲は乙に譲渡した売掛債権・手形の債務者・手形支払義務者が支払停止をなるか、その業状に重大な変化を生じたことを知った時は、ただちに乙に報告する。

解説

譲渡した売掛債権の売掛先に倒産の兆候があれば報告する義務があるということです。ノンリコースのファクタリングであれば、倒産したからと言っても、ファクタリングの譲渡金を返還しろとは言われませんが、報告する義務はあるということです。

注意点

とくになし

第13条

(担保引渡し並びに権利行使に関する協力)

  • 第4条第1項および第2項による譲渡のあった売掛債権・手形に対し、甲が所有する一切の担保について、甲は乙より要求のあった場合にはただちにこれを乙に譲渡し、且つ甲は乙がその権利を行使するにつき乙に協力する。
  • 前項の担保権が確定前の根抵当権である場合には甲は乙に対して当該根抵当権を譲渡するものとし、甲が享受しているのと同じ担保権者としての地位を乙が取得することを目的として、これに必要な根抵当権設定者ならびにそのほかの利害関係人の承諾を得る。
解説

これもレアケースですが「売掛債権」を取得するときに支払の担保を取ることもゼロではありません。売掛債権が払えなかったときのための担保です。「譲渡する売掛債権に対して担保を持っていたら、担保も含めて譲渡してください。」ということを意味しています。

注意点

とくになし

第14条

(回収に対する協力)

第4条第1項および第2項による譲渡のあった売掛債権・手形について、債務者、手形支払義務者がその債務を弁済しない場合には甲は当該回収につき公が行いうるあらゆる手段により、乙に協力する。

解説

「譲渡したから終わり」というわけではなく、ファクタリングの場合はファクタリング業者へ売掛金の支払いが行われなくても、返済する責任はありませんが、支払われるように協力する責任はあるということです。売掛先へ支払いを催促する、連絡するなどの協力は必要になります。

注意点

とくになし

第15条

(期限の利益の損失)

  • 甲が次の各号の1つにでも当該した場合には、甲が乙から通知催告等がなくても乙に対するいっさいの債務について当然期限の利益を失いただちに債務を弁済する。
    ⑴支払の停止または破産、民事再生手続開始、会社更生手続開始、会社整理開始、もしくは特別清算開始の申し出があったとき。
    ⑵手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
    ⑶甲の乙に付する債権について、仮差押、保全差押または差押の命令、通知が発送されたとき。
    ⑷住所変更の届出を怠るなど甲の責に帰するべき事由によって、乙に甲の所在が不明になったとき。
  • 次の書く場合には甲は乙の請求によって、乙に対するいっさいの債務の期限の利益を失い、ただちに債務を弁済する。
    ⑴甲が債務の一部でも履行を遅延したとき。
    ⑵担保の目的物について差押または競売手続の開始があったとき。
    ⑶甲が乙との取引約定に違反したとき。
    ⑷保証人が前項または本項の各号の一つにでも該当したとき。
    ⑸前各号のほか債権保全を必要とする相当の事由が生じたとき。
解説

これはファクタリングではなくて「融資」の場合ですが、破産などがあった場合には毎月○万円の返済と決まっていても「期限の利益の損失」が発生します。つまり「一括返済してください。」ということです。

注意点

とくになし

第16条

(相殺)

期限の到来、期限の利益の損失、受戻し義務の発生、求償債務の発生その他の事由によって、甲が乙に対する債務を履行しなければならない場合には乙は甲に対して有する債権と甲に対して負担する債権とを、その債務の期限のいかんにかかわらず、いつでも相殺することができる。

解説

これはファクタリングではなくて「融資」の場合ですが、「期限の利益の損失」などがあれば担保である売掛債権の売却をして、融資した債務と相殺するということです。

注意点

とくになし

第17条

(債務弁済等の充当の順序)

甲の乙に対する債務の弁済、または前条により相殺する場合に甲の債務全額を消滅させるに足りないときは、乙が適当と認める順序方法により充当することができる。

解説

これはファクタリングではなくて「融資」の場合ですが相殺しても、足らない場合は別の方法で請求するということです。

注意点

とくになし

第18条

(担保)

  • 債務保全のためにこうは別に定める担保もしくは増担保を差入れ、または保証人をたてもしくはこれを追加するものとする。
    甲が乙に対し現在差し入れている担保および将来差入れる担保はすべてその担保する債務のほか現在および将来負担するいっさいの債務を共通に担保するものとする。
  • 乙は担保につき必ずしも法廷の手続きによらず、一般に適当と認められる方法、時期、価格等により取り立てまたは処分の上、その取得金から諸費用を差し引いた残額を法廷の順序にかかわらず甲の債務の弁済に充当できるものとし、なおその残債務がある場合には甲はただちに弁済する。
  • 甲が乙に対する債務を弁済しなかった場合には乙の占有している甲の動産、売掛債権、手形その他の有価証券を取立てまたは処分することができるものとし、この場合もすべて前項に準じて取り扱うこととする。
解説

これはファクタリングではなくて「融資」の場合に担保は売却して、返済に充当できるということを意味しています。

注意点

とくになし

第19条

(免責条項および費用の負担)

  • 甲が乙に譲渡した売掛債権につき契約手続上の瑕疵によりその権利が成立しない場合、および甲が乙に譲渡した手形について手形要件の不備または手形を無効にする記載によって手形上の権利が成立しない場合には、甲は当該売掛債権・手形面記載の金額の責任を負う。
  • 乙が甲との取引にあたり甲の印影を甲が届け出た印鑑と相当の注意をもって照合し、相違ないと認めて取引した時は偽造、変造、盗用等の事故があっても、これによって生じた損害は甲の負担とする。
  • 甲に対する権利の行使もしくは保全または担保の取立もしくは処分に要した費用は甲が負担する。
解説

「契約手続上の瑕疵」つまり、契約書に虚偽などがあった場合には契約は成立せず、ファクタリングで資金化した金額全額の返済義務を負うということです。

注意点

とくになし

第20条

(届出事項)

  • 甲の印章、名称、商号、代表者、住所、その他届出事項に変更があったときは、甲はただちに書面により乙に届出る。
  • 甲が前項の届出を怠ったため、乙がなした通知または送付した書類などが延着し、または到着しなかった場合には、通常到達すべき時に甲に到着したものとする。
解説

印鑑、住所、会社名など変更があったら書面で通知する義務があります。

注意点

とくになし

第21条

(報告及び調査)

  • 甲の財産、経営、業況について乙から請求があったときは甲はただちに報告し、また調査に必要な便益を提供する。
  • 甲の財産、経営、業況について重大な変化を生じたとき、または生ずるおそれのあるときは、乙から請求がなくても甲はただちに報告する。
解説

ファクタリング業者から依頼があった場合には、経営状況や財産状況についT報告する義務があるということです。

注意点

とくになし

第22条

(契約期間)

  • 本契約の取引期間は契約締結の日より1カ月とし、期間満了前3ヶ月迄に当事者のいずれか一方より何等かの意思表示がない限り、自動的に更に1カ年更新し、以後もこの例による。
  • 前項にかかわらず甲につき第15条第1項もしくは第2項の事由を生じた場合、乙はこの契約を解除することができる。
    甲または乙は3ヶ月の予告をおいていつでもこの契約を解除することができる。
解説

ファクタリング契約の契約期間です。この場合は1ヶ月での自動更新と3か月前の契約解除を前提としています。

注意点

自動更新がイヤな場合、あらかじめ1年、2年など期間を決めることも可能です。ファクタリング契約が残っていたとしても、とくに問題はありませんが気になる方は自動更新ではない形を要望すると良いでしょう。

第23条

(清算事項)

前条により本契約が終了したときは甲は乙に対し一切の債務を弁済し、乙は甲より譲渡をうけて保有する一切の売掛債権・手形を甲に返還するとともに利息、買取料、ファクタリング料等の清算を行なう。

解説

契約終了時に保有している売掛債権や未払いの買取料などがある場合は清算するということです。単発のファクタリングであれば関係ありませんが、毎月発生する売掛債権に対して継続的なファクタリング契約を締結する場合には、終了するタイミングで清算する必要があるのです。

注意点

とくになし

第24条

(保証)

  • 保証人は甲が本契約および本契約に付随する契約にもとづく取引によって乙に対し負担する一切の債務について、甲と連帯して保証債務を負い、その履行についてはこの契約に従う。
  • 保証人は乙の都合によって担保もしくは他の保証を変更、解除しても免責を主張しない。
  • 保証人が保証債務を履行した場合、代位によって乙から取得した権利は甲と乙との取引継続中は、乙の同意がなければこれを行使しない。
    もし、乙の請求があればその権利または順位を乙に無償で譲渡する。
解説

ファクタリングに保証人はいませんが、融資の場合に保証人をつけることがあります。保証人は保証債務があることが記載されています。

注意点

とくになし

第25条

(合意管轄)

この契約にもとづく諸取引に関して訴訟の必要が生じた場合は、甲は乙の本店または乙の___支店の所在地を管轄する裁判所を管轄裁判所とすることに合意する。

解説

契約書のデフォルトの文言です。

第26条

(別途協議)

本契約に定めのない事項については、その都度相互に協議して決定する。

解説

契約書のデフォルトの文言です。

第27条

(特約事項)

  • 乙が甲に対する一切の債権を保全する必要があると認めたときには、乙は甲の承諾なく甲よりファクタリング取引に関して予め交付を受けていた乙の債務者に対する一切の債権についての債務譲渡通知書を直ちに債務者に対し送達することができる。
  • ファクタリング取引に関して予め甲より乙に対し振出交付されていた手形についても前項同様の事実が発生した場合には、乙は甲の承諾なく完全手形に補充記載のうえ、直ちに同手形を以て即日支払いを求めるために乙は甲に対し同手形の支払場所に支払呈示することができる
解説

ファクタリング業者の判断で売掛先に譲渡通知書を送付できると書いてあります。

注意点

「売掛先 = クライアント」ですから、いきなり譲渡通知書を送付されても困ってしまいます。このような特記事項があった場合には「どのようなケースでこれが発生するのか?」ファクタリング業者にヒアリングしておくべきです。

ファクタリング取引契約書の簡易版テンプレート

債権譲渡契約書

譲渡人「     」(以下「甲」という)と譲受人「    」(以下「乙」という)との間において次のとおり債権譲渡契約を締結する。

第1条

甲の乙に対する債務(以下本件債務)の弁済のために、甲が債務者(以下丙)に対して有する以下の債権を甲は乙に対して譲渡する。

  • 債権者(甲)
  • 債務者(丙)
  • 債権額  金
  • 債権の発生原因   平成  年  月  日
  • 弁済の期日  平成  年  月  日

第2条

本契約締結後速やかに甲は丙に対し債権譲渡の通知を行うかまたは(民法467条に基づき)確定日付のある丙の異議なき承諾を得るとともに、乙による権利行使に必要な書面を乙に交付するものとするものとする。

第3条

  • 甲は、本件譲渡債権につき不存在、無効、取消、相殺、条と禁止特約等の抗弁事由を含む瑕疵が一切ないことを乙に対して保証する。
    丙が、前条に基づく甲からの債権譲渡通知の到達前に甲に対して生じた事由をもって乙に対抗し、それにより本契約の目的を達することができなくなる場合は、乙は本契約を直ちに解除することができる。
  • 債務者が弁済期日に弁済をしなかった場合には、乙は何ら催告をすることなく本契約を解除することができる。

第4条

  • 乙は、本件譲渡債権の全額について、その支払対期日に丙から直接弁済をうけるものとし、当該弁済の順序は乙の任意とする。
  • 乙が丙から支払を受けた譲渡債権の総額が、本件債務の支払い期日において、本件債務の総額に満たなかったときは、甲は直ちに乙に対し不足額を支払う。
  • 乙が丙から支払を受けた譲渡債権の総額が、本件債務の総額を超過したときは、乙はすみやかに甲に対して、超過額を返還する。

第5条

乙が丙から譲渡債権について支払を受け、その総額が本件債務の総額に達した場合において、本件債務の支払いがあったものとみなし、本件債務は消滅する。

第6条

本契約に関して甲乙間に訴訟の必要が生じた場合は、   地方裁判所を管轄裁判所とする。

以上の契約成立を証するため、本書3通を作成し、各当事者押印の上各自1通を所有する。

平成  年  月  日

譲渡人(甲)
住所

氏名                    印

譲受人(乙)
住所

氏名                    印

債務者(丙)
住所

氏名                    印

まとめ

ファクタリング取引契約書には

前者のように総合的なファクタリング取引契約を締結して、個別の案件ごとに別途覚書などを締結するスタイルや後者のように一回限りの債権譲渡契約を交わして行うスタイルもあります。

これらは

  • ファクタリング業者の企業規模
  • ファクタリング業者が提供しているファクタリングサービスの種類

によっても異なります。

注意点は

  • 可能な限り自分で契約書の内容を読み込むこと
  • 契約書の内容に不明点があればファクタリング業者にヒアリングすること
  • 契約書の内容に外してほしい、修正してほしい事項があれば要求すること
  • ファクタリング手数料に不満があるのであれば別のファクタリング業者に見積り依頼をすること
  • 売掛先(クライアント)への対応方法に注意すること

などがあります。

man
「契約書は文字がいっぱいでチェックするのが面倒だからまぁ大丈夫だろう。」
「早く資金が必要だから、契約書も早く捺印してしまいたい。」

安易に考えるものではないので注意が必要です。

また、ファクタリング契約がないファクタリング業者や、ファクタリング契約書に関する質問などに誠実に回答してくれないファクタリング業者は、悪徳業者の可能性が高いので、利用しないようにしましょう。

できれば、2社、3社のファクタリング業者に相見積もりをして、ファクタリング契約書も複数入手すれば、何が違うのか?比較しながら検討することも可能です。

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最近では「電子契約」も一般的ですので、電子契約だからこそ、契約を読み込むことがおろそかになるケースもあるので注意が必要です。

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