赤字でも利用できるか

赤字のままファクタリングを繰り返すとき、どこで止めるかを数える

赤字が続くなかで毎月ファクタリングを使うと、手数料は利益ではなく将来の入金から出ていきます。累積と期間をそろえた換算を仮定の数値で計算し、金融庁が貸金業該当のおそれを示す契約の形を確かめ、中小企業活性化協議会と日本政策金融公庫の公表値で切替先を並べます。

毎月のように売掛金を売って支払いを回している、という状態で読まれていると思います。先に結論を書きます。利用の回数そのものを制限する定めはありません。回数の考え方はファクタリングは何回も使える?にまとめました。ただし赤字が続いている会社では、同じ金額の手数料が、黒字の会社とは別のところから出ていきます。

出どころが変わる、というのがこの記事の中心です。利益が出ている期なら、手数料はその利益の一部と入れ替わります。利益が無い期には、入れ替える相手がありません。減るのは、来月以降に入ってくる予定だった入金そのものです。その不足を埋めるためにまた売る形に入ると、手数料は循環が1周するたびに新しく発生します。

この記事では、まず出どころの違いを確かめ、仮定の数値で12か月ぶんの手数料を数えます。次に、期間をそろえた費用の比べ方と、金融庁が貸金業に該当するおそれを挙げている契約の形を確認します。最後に、止めるかどうかを自分で数える3つの指標と、公表されている公的な切替先を、費用の負担まで並べます。申し込めるかどうかという入口の話は赤字でもファクタリングは使えるのか、審査で自社の数字がどこに効くのかは債務超過・赤字でファクタリングの審査はどこを見るかにあります。

赤字の期は、手数料が利益ではなく次の入金から出ていく

金融庁は、ファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」と説明しています。期日前に受け取るための対価が手数料なので、額面と手取りの差は、売った時点で確定します。ここまでは赤字でも黒字でも同じ計算です。

違いが出るのは、その差額をどこで吸収するかです。利益が出ている期は、手数料の分だけ利益が薄くなって終わります。手元の現金は額面より少なくなりますが、来月の入金予定はそのまま残っています。一方、赤字の期は吸収する利益がありません。売った債権は期日が来ても入ってこないので、減るのは来月以降の入金予定です。

この違いは、翌月に取れる手が変わるという形で表れます。利益が残っていれば、来月は売らずに支払える余地があります。入金予定が減っていれば、その不足をどこかで埋めることになり、いちばん手近な方法が「また売る」になりやすい。そして売れる債権の残りは、そのたびに細くなります。

利益が出ている期と赤字の期を左右に並べ、売掛金を売る、手数料の出どころ、翌月に残るものの3段で違いを示し、下段に売る・支払う・入金が減る・また売るという循環を並べた図
図1:手数料の金額は同じでも、出どころと翌月に残るものが変わるファクタリングが売掛債権等を期日前に買い取るサービスであることは、金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」で確認しています(2026年11月2日確認)。図中の100万円は仕組みを示すための仮定で、実際の手数料は各社の公表範囲と契約の条件によります。

資金繰り表を作っていれば、この減り方は数字で見えます。入金予定の行から、売った債権の金額を外したうえで翌月以降を並べるためです。作り方は資金繰り表の作り方にまとめました。売った債権を入金予定に残したままにすると、同じ入金を二重に数えることになります。

12か月続けたら、手数料はいくらになるのか

1回あたりの手数料は、額面に対する割合で示されることが多いため、1回だけ見ていると小さく見えます。繰り返しを前提にするなら、見る単位を1年に変えるほうが実態に近い。ここでは仮定の数値で数えてみます。

置く仮定は3つです。額面100万円の売掛金を売る。売る時点で支払期日まで30日ある。これを毎月1回、12か月続ける。手数料率は2%、5%、10%の3通りを置きます。この率は相場を示すものではありません。各社が公表している手数料の範囲は、出典と確認日つきでファクタリング会社の比較に並べています。手数料の決まり方そのものは手数料の計算方法で扱っています。

手数料率2パーセント、5パーセント、10パーセントの3つの仮定について、1回あたりの手数料、12回ぶんの合計、365日に引き伸ばした換算、合計額の大きさを棒で並べた数値図
図2:仮定の計算例。額面100万円を毎月1回・12か月売った場合1回あたりの手数料は20,000円・50,000円・100,000円で、12回ぶんの合計は240,000円・600,000円・1,200,000円になります。右の換算は手数料率に365を掛けて30で割ったもので、期間をそろえるためだけの数値です。金融庁は「高額な手数料を支払うと、かえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険性があります」としています(2026年11月2日確認)。

数えると、1回あたりでは2万円から10万円の話が、12回で24万円から120万円になります。この金額を、直近の損失額の隣に書いてみてください。損失が年間100万円で、手数料の合計が60万円だったとすれば、損失のうち相当の部分を手数料が作っていることになります。もちろん、売らなければ支払いが止まっていたかもしれません。どちらが良いかをここで決めることはできませんが、金額を知らないまま続けるのと、知って続けるのは別のことです。

手数料だけが費用ではない点も、合計を出すときに関わります。手数料のほかに、債権譲渡登記を行う場合の登記費用、事務手数料、振込手数料がかかる場合があります。内訳は手数料以外に発生しうる費用にまとめました。下限の率だけを見ると、負担を見誤ります。

期間をそろえないと、ほかの手段と費用を比べられない

ここで気をつけることがあります。ファクタリングの手数料は利息ではありません。債権の売買の対価なので、契約上は年率という概念がありません。それでも、同じ資金を同じ期間使う別の手段と費用を比べるには、期間をそろえる必要があります。

そろえ方は単純です。30日ぶんの費用を365日に引き伸ばします。手数料率に365を掛けて30で割る、という計算です。図2の右端がこれで、2%なら約24.3%、5%なら約60.8%、10%なら約121.7%になります。この数値は年利ではなく、期間をそろえるためだけの換算です。利率として提示されたものでもありません。

それでも計算する意味があるのは、期日までの日数が短いほど、同じ率の負担が重くなるからです。期日まで60日ある債権を5%で売るのと、15日しか残っていない債権を5%で売るのでは、1日あたりの負担が4倍違います。急いで申し込むほど、この差は広がる方向に動きます。期日までの日数と入金までの時間の関係は入金までにかかる日数で扱っています。

比べる相手が公的な融資であれば、年あたりの利率で条件が公表されています。日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)は、国民生活事業のページで融資限度額7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれもうち据置期間3年以内)と公表されています。利率は基準利率で、一定の要件を満たす場合は特別利率が適用されることがあるとされています(2026年11月2日確認)。速さの代わりに何を払っているのかは、期間をそろえてはじめて見えます。ほかの調達方法との並べ方は中小企業の資金調達方法にあります。

契約書に「買い戻す」「自社の資金で支払う」が入っていないか

費用の話より先に済ませたい確認があります。繰り返しているのが、そもそも債権の売買なのかどうかです。金融庁は、契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」であることが定められた取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものについては、貸金業に該当するおそれがあるとしています。

同じ注意喚起で挙げられている形が2つあります。売主が債権を買い戻すこととされているもの、そして売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされているものです。繰り返して使っていると、この形に入っていても気づきにくくなります。売掛先からの入金を自分が受け取って送っている取引では、入金が遅れたときに自己資金で立て替える約束が契約に残っていないかを読んでください。条項の読み方は償還請求権とはにまとめました。

当てはまる場合は、費用の計算の前に弁護士へ相談してください。当サイトでは、個別の契約が貸金業に該当するかどうかの判断をしません。実態に照らして判断されるものであり、契約書の形式だけでは決まらないためです。契約後に気づいたときの動き方は契約後に違法なファクタリングだと気づいたらで扱っています。

なお、個人が使用者に対して有する賃金債権を買い取る取引については、金融庁が、業として行うことは貸金業に該当すると示しています。事業者向けのファクタリングとは別の取引です。違いは給料ファクタリングとの違いにまとめました。

止めるかどうかは、この3つを数えてから決める

続けるか止めるかを、気持ちで決めると後から振り返れません。数えられる指標を3つに絞ります。いずれも自社の契約書と入金明細から出せるもので、相場の数字は使いません。

指標 数え方 読み方
1年ぶんの手数料合計 直近12か月に売った債権について、額面と入金額の差を合計する。登記費用・事務手数料・振込手数料も足す 直近の損失額の隣に並べる。損失のうちどれだけを手数料が作っているかを見る
売掛金のうち売却済みの割合 支払期日前の売掛金の総額に対し、すでに売った債権の額面が占める割合 割合が大きいほど、次に資金化できる債権が少ない。残りが細るほど打てる手が減る
前回の不足を埋めた額 今回の手取りのうち、前回の支払いの不足に充てた金額 0でなければ、売却が次の売却を呼ぶ循環に入っている

3つ目がいちばん重要です。1回ごとに見ると、どの売却も単独の判断に見えます。前回の不足を今回の手取りで埋めているかどうかを書き出すと、単独の判断の連続ではなく、ひとつの循環になっていることが分かります。循環に入っているなら、次の1回を減らすのではなく、循環そのものを止める相談先を探す段階です。

2つ目の割合は、残っている手の数を示します。期日前の売掛金が1,000万円あり、すでに700万円を売っているなら、次に回せるのは300万円です。同じ売掛先に偏っていないかも、あわせて確認してください。1社に集中していると、その売掛先の支払が遅れた時点で、同時に次の資金化もできなくなります。他社と契約中に別の会社へ申し込む場合の注意点は他社を利用中に別の会社へ申し込む場合にあります。

手数料を費用に計上しても、所得が出ていない期の税額は動かない

赤字の会社では、「費用が増えても税金で戻ってくる」という考え方が働きません。所得が出ていない期には、減らせる税額がそもそもありません。手数料の税務上の扱いそのものはファクタリング手数料は経費になるのかで国税庁の公表資料をもとに整理しています。

将来に向けては、繰越の制度があります。国税庁は、確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入されると説明しています。控除限度額については、中小法人等以外の法人は所得金額の50%とされ、中小法人等にはこの限度額の制限がありません(2026年11月2日確認)。

つまり、手数料を費用に計上した結果が将来の所得と相殺される余地は、制度として置かれています。ただしそれは利益が出る期が来たときの話で、今期の資金が戻るわけではありません。適用には青色申告書の提出や申告の継続といった条件が関わるため、自社に当てはまるかどうかは税理士に確認してください。当サイトでは個別の税務判断を行いません。

公表されている切替先は、費用の負担まで決まっている

循環を止めると決めても、資金の必要がなくなるわけではありません。止めるという判断は、相談先を変えるという判断とセットになります。公的な窓口は、支援の内容と費用の負担まで公表されています。

制度(窓口) 公表されている内容 出典・確認日
経営改善計画策定支援(中小企業活性化協議会) 専門家に対する支払費用の3分の2を協議会が支援。通常枠は上限300万円(DD・計画策定支援費用 上限200万円+伴走支援費用 上限100万円)、中小版GL枠は上限700万円。金融機関交渉費用は任意で上限10万円 中小企業基盤整備機構/2026年11月2日
早期経営改善計画策定支援(同) 専門家に対する支払費用の3分の2(上限80万円)を協議会が支援。計画策定支援費用 上限50万円、伴走支援費用 上限30万円。企業概要書作成費用と金融機関交渉費用は、これとは別にそれぞれ3分の2・上限10万円 中小企業基盤整備機構/2026年11月2日
経営環境変化対応資金(日本政策金融公庫 国民生活事業) 融資限度額7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれもうち据置期間3年以内)。利率は基準利率で、一定の要件を満たす場合は特別利率が適用されることがある 日本政策金融公庫/2026年11月2日

窓口は探しやすい場所にあります。中小企業基盤整備機構は、経営改善計画策定支援事業の受付等を全国47都道府県にある中小企業活性化協議会が行っていると案内しています。対象として示されているのは、借入金の返済など財務上の問題を抱え、自ら経営改善計画を策定することが難しい状況にある中小企業・小規模事業者です。

中小企業基盤整備機構の「経営改善計画策定支援事業」のページ。経営改善計画策定支援事業と早期経営改善計画策定支援事業の案内が並んでいる
費用の負担と受付窓口を案内している一次情報中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」のページ冒頭。上の表に書いた補助の割合・上限額と、受付が全国47都道府県の中小企業活性化協議会であることは、このページで確認しています(2026年11月2日取得)。ページの内容と権利は中小企業基盤整備機構に帰属します。

公的な融資のほうは、申し込んでから入金までに時間がかかります。速さではファクタリングに及びません。だからこそ、支払いが迫ってから相談するのではなく、循環に気づいた時点で動くかどうかが分かれ目になります。税金や社会保険料の滞納が絡んでいる場合は、先に猶予の制度を確かめる余地があります。扱いは税金を滞納していてもファクタリングは使えるのかにまとめました。

確かめる順番をひとつにまとめる

整理します。手数料の金額は赤字でも黒字でも同じですが、出どころが変わります。利益が無い期は、来月以降の入金予定が削られ、その不足を埋めるためにまた売る形に入りやすい。この循環に入っているかどうかは、今回の手取りで前回の不足を埋めたかどうかで分かります。

確かめる順番は4つです。最初は費用ではなく契約の形で、売主が買い戻すこととされていないか、売主自身の資金で支払をしなければならないこととされていないかを読みます(金融庁の注意喚起が挙げている類型)。次に今回の手取りの使い先、残っている売掛金の割合、1年ぶんの手数料合計と直近の損失額の比較です。

契約の形、手取りの使い先、残りの債権、費用と損失という4つの確認を01から04の順に並べ、下段に中小企業活性化協議会・日本政策金融公庫・税理士と弁護士という3つの向かう先を示した判断の流れ図
図3:01は費用ではなく契約の確認。02から04は自社の帳簿から数える01の類型は金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」、下段の窓口は中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」と日本政策金融公庫「経営環境変化対応資金」によります(いずれも2026年11月2日確認)。02から04に相場の数字は使いません。

数えた結果をどう使うかは、会社ごとに違います。当サイトは、繰り返しをやめるべきだとも、続けるべきだとも書きません。決める材料として、1年ぶんの金額、残っている債権、循環に入っているかどうか、そして公表されている切替先の費用を並べました。各社が公表している手数料の範囲や買取の対象を確かめ直すならファクタリング会社の比較へ、ほかの利用条件をケース別に見るなら利用条件・ケース別へ進んでください。

この記事の出典

手数料・条件・手続きは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、申込みの前に各社の公式ページで確かめてください。