税金滞納でも利用できるか

税金を滞納しているとファクタリングは使えないのか

税金や社会保険料を滞納していてもファクタリングを使えるのかを、金融庁・国税庁・日本年金機構・信用保証協会の公表内容と条文から確かめます。滞納が効いてくるのは申込みの入口ではなく売掛金の差押えという経路で、その手前には換価の猶予という選択肢が残っています。

「税金を滞納しているのですが、ファクタリングは使えますか」。この質問には、はい・いいえのどちらで答えても足りません。制度ごとに、滞納の効き方がまるで違うからです。

先に結論を書きます。滞納していること自体を利用できない理由として定めた公的なルールは、確認できませんでした。ファクタリングは債権の売買であって、返す見込みを見る取引ではないからです。一方、公的な保証を使う融資では、滞納は入口で直接効きます。東京信用保証協会は、利用できない中小企業として「税金を滞納し完納の見通しが見込めない」場合を挙げています(2026年9月8日確認)。

ただし、ここで安心してはいけません。滞納が効いてくる経路は、入口ではなく売る対象の側にあります。売ろうとしている売掛金そのものが差し押さえられると、売るという前提が崩れます。この記事では、その差押えがどの時点で起きるのかを条文で追い、先に検討すべき公的な猶予制度と、滞納している状況に付け込まれないための確認点まで整理します。

借りる制度と売る取引では、滞納の効き方が違う

金融庁は、ファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」と説明し、法的には債権の売買(債権譲渡)契約であるとしています(2026年9月8日確認)。売買である以上、買う側が確かめたいのは、その債権が期日に支払われるかどうかです。売主の納税の状況は、その問いの中心にありません。

これは、貸す側の見方とはっきり違います。貸すのであれば、返す人の状態を見ます。滞納は返済の余力を測るうえでの材料になりますし、公的な保証を使う制度なら、そもそも制度の側が線を引いています。東京信用保証協会は、利用できない中小企業として「確定申告をしていない方」「税金を滞納し完納の見通しが見込めない」場合などを挙げています(2026年9月8日確認)。

信用保証付きの融資・ファクタリング・猶予制度の3つについて、取引の性質、税金の滞納の扱い、滞納が効く経路、確認した一次情報の4つの観点を並べ、滞納が入口で効くのか売る対象の側で効くのかを対比した比較マトリクス
図1:同じ「滞納」が、借りる制度・売る取引・納める側の手続でどこに効くかを並べたもの東京信用保証協会「ご利用いただけない中小企業とは」、金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」、国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」(いずれも2026年9月8日確認)をもとに作成しました。列の順序に評価の意味はありません。

この違いは、優劣ではありません。ファクタリングのほうが緩い、という意味でもありません。滞納は入口を塞ぐ形では効かず、代わりに売る対象の側で効いてきます。融資が難しくなった状況での考え方は銀行融資を断られたあとの選択肢、借入との性質の違いはファクタリングと融資は何が違うのかにまとめています。

なお、必要書類として確定申告書や決算書を挙げている会社もあります。それを何のために見ているかまでは公表されていないので、ここでは推測しません。書類そのものの考え方はファクタリングに確定申告書は必要かで扱っています。

分かれ目は、その売掛金がまだ自分のものかどうか

滞納を放置したときに何が起きるかは、条文に順を追って書かれています。順番を知っておくと、いま自分がどこにいるのかを自分で言えるようになります。

国税通則法は、納税者が納期限までに完納しない場合、税務署長は督促状によりその納付を督促しなければならないと定め、その督促状は「その国税の納期限から五十日以内に発するものとする」としています(第37条第1項・第2項)。そして国税徴収法は、滞納者が督促を受け、その督促に係る国税を「その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき」、徴収職員は滞納者の財産を差し押えなければならない、と定めています(第47条第1項第1号)。

国税の納期限に完納しない時点から、督促状の発付、督促状を発した日から起算して十日を経過した日、売掛金の差押え、徴収職員による取立てまでの5段階を縦の工程軸に並べ、各段に根拠条文を示した図
図2:納期限から売掛金の差押え・取立てまでを、根拠条文とともに5段階に分けたものe-Gov法令検索で確認した国税通則法第37条、国税徴収法第47条・第62条・第67条と、国税庁「No.9205 延滞税について」(いずれも2026年9月8日確認)をもとに作成しました。実際の進み方は個別の事情によって変わります。

注目してほしいのは、差押えの対象に売掛金が含まれることと、その手続の形です。国税徴収法第62条は、債権の差押えは「第三債務者に対する債権差押通知書の送達により行う」とし、差押えの効力は「債権差押通知書が第三債務者に送達された時に生ずる」と定めています。ここでいう第三債務者は、売掛先です。つまり差押えの効力が生じる時点は、売掛先に通知が届く時点と一致します。

同じ第62条の第2項は、徴収職員は債権を差し押えるとき「債務者に対しその履行を、滞納者に対し債権の取立その他の処分を禁じなければならない」と定めています。さらに第67条第1項は、徴収職員は差し押えた債権の取立をすることができるとし、第3項は、取り立てた金銭の限度で滞納者から差押えに係る国税を徴収したものとみなすとしています。売掛金が回収の対象そのものになる、ということです。

だから最初に確かめるのは、売ろうとしている売掛金がこの流れの中に入っていないか、です。あわせて、差押えの通知は売掛先に届くという点も見落とせません。売掛先に知られたくないという前提が、そこで成り立たなくなります。売掛先の関与のしかたは2社間ファクタリングとは、通知や登記の扱いは売掛先への通知は必要かで扱っています。

差し押さえられた債権を売ろうとした場合にどうなるかは、条文の解釈と個別の事情によって変わります。当サイトは法律の個別判断をしません。ただ、条文が「処分を禁じなければならない」と書いている以上、その状態のまま売買の話を進めるのであれば、契約の前に弁護士の確認が要ります。

社会保険料も同じ形で進むが、期限の数え方が違う

資金繰りの相談で挙がるのは、国税より社会保険料のほうが多いかもしれません。手続の骨組みは似ています。ただ、差押えにつながる期限の決め方が違います。

厚生年金保険法は、保険料その他の徴収金を滞納する者があるときは厚生労働大臣が期限を指定して督促しなければならないとし、督促状を発すること、そして「第二項の督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して十日以上を経過した日でなければならない」と定めています(第86条第1項・第2項・第4項)。国税が「発した日から起算して十日を経過した日」という決まった数え方であるのに対し、こちらは督促状に書かれた指定期限そのものを見ることになります。

見る点 国税 厚生年金保険料等
督促の根拠 国税通則法第37条第1項 厚生年金保険法第86条第1項
督促状を発する時期 その国税の納期限から五十日以内に発するものとする(第37条第2項) 条文に日数の定めを確認できませんでした(期限を指定して督促する)
差押えにつながる期限 督促状を発した日から起算して十日を経過した日(国税徴収法第47条第1項第1号) 督促状により指定する期限。督促状を発する日から起算して十日以上を経過した日でなければならない(第86条第4項)
延滞の割合が切り替わる時期 納期限の翌日から2か月 納付期限の翌日から3か月

日本年金機構は、督促状で指定した期限までに完納されない場合、滞納保険料等を回収するための滞納処分に入ると案内しています(2026年9月8日確認)。どちらも、督促状が届いた時点が最後の分岐点です。封を開けないまま置いておくと、次に届くのは差押えの通知になります。

待っている間も、金額は静かに増えていく

見落とされやすいのが、時間そのものの費用です。

国税庁は、延滞税の割合について、納期限の翌日から2か月を経過する日までは原則として年7.3%、それ以後は原則として年14.6%としたうえで、特例により2026年1月1日から2026年12月31日までの期間は年2.8%と年9.1%になると公表しています(2026年9月8日確認)。日本年金機構は、厚生年金保険料等の延滞金について、納付期限の翌日から3か月を経過する日までと、その翌日以降で割合を分け、2026年の同じ期間について年2.8%と年9.1%を示しています(2026年9月8日確認)。

2026年に適用される国税の延滞税と厚生年金保険料等の延滞金の割合を、区分が切り替わる前の年2.8パーセントと後の年9.1パーセントに分け、法令上の原則である年7.3パーセントと年14.6パーセントの位置を破線で示した横棒グラフ
図3:2026年に適用される延滞税・延滞金の割合と、切り替わりの時期の違い国税庁「No.9205 延滞税について」と日本年金機構「延滞金について」(いずれも2026年9月8日確認)に公表された割合をそのまま図にしました。割合は年ごとに見直されます。

ここで、やってはいけない比べ方があります。この割合とファクタリングの手数料を並べて「どちらが安いか」を出さないでください。延滞税・延滞金は年あたりの割合で、納付が済むまで日数に応じて積み上がります。ファクタリングの手数料は1回の取引に対する割合で、期間の取り方がそもそも違います。同じ土俵の数字ではありません。

ここから言えるのは、先送りしている間、負担は止まらずに増え続けるということだけです。だから資金の手当てと並行して、次の猶予制度を確認してください。

差押えの手前で止める制度が、先に用意されている

国税庁は、国税を一時に納付できない場合の手続として、換価の猶予と納税の猶予を案内しています。滞納している人が使うことを前提に作られた制度です。

国税庁タックスアンサー「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」のページ冒頭。国税を一時に納付できない場合に換価の猶予や納税の猶予を受けられる場合があることが案内されている公式ページであることが分かる
猶予制度の要件と効果を確認した一次情報(引用)国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」のページ冒頭(2026年9月8日取得)。本文で引用した要件・申請期限・猶予期間・猶予が認められた場合の効果は、このページで確認しています。ページの内容および名称の権利は同庁に帰属します。

換価の猶予について、国税徴収法第151条の2は、滞納者がその国税を一時に納付することにより「その事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがある」と認められ、かつ「納税について誠実な意思を有すると認められるとき」に、その国税の納期限から六月以内にされた申請に基づき、一年以内の期間を限り、滞納処分による財産の換価を猶予することができると定めています。国税庁は、猶予を受けられる期間について、1年の範囲内で最も早く国税を完納することができると認められる期間に限られるとし、延長が認められる場合も2年を超えない範囲であると案内しています(2026年9月8日確認)。

制度 主な要件 申請の期限 認められた場合
換価の猶予(国税) 一時に納付することにより事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあると認められること/納税について誠実な意思を有すると認められること/その国税以外の国税の滞納がないこと 納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること 財産の換価や差押えなどが猶予され、猶予期間中の延滞税が免除または軽減される
納税の猶予(国税) 財産について災害を受けたり盗難にあったことなど特定の事実があり、一時に納付することができないと認められること 申請書が提出されていること 同上(国税庁は「財産の換価(売却)や差押えなどが猶予されるほか、猶予期間中の延滞税が免除または軽減されます」と案内)
換価の猶予(厚生年金保険料等) 一時に納付することにより事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあり、かつ納付に対する誠実な意思を有すると認められること 猶予を受けようとする保険料等の納期限から6か月以内 猶予期間内に分割して納付でき、猶予期間における延滞金の一部が免除される

期限の数え方に注意してください。国税も厚生年金保険料等も、猶予を受けようとするものの納期限から6か月以内という申請期限が要件のひとつとして挙げられています。「もう遅い」と決めつけて何もしないより先に、納期限から何か月経っているかを数えてください。数えれば、まだ間に合うかどうかが分かります。

そのうえで資金の手当てとしてファクタリングを検討するなら、順序があります。猶予の相談 → 資金繰りの組み立て → 売れる債権の確認です。逆にしないでください。猶予が認められれば差押えが猶予され、延滞税・延滞金の負担も軽くなります。売る債権を守ることにも直結します。

滞納している状況に、付け込まれないために

ここがこの記事でいちばん重要な部分です。滞納があると、選択肢が少ないと感じます。その感覚が判断を歪めます。

金融庁は、ファクタリングを装った違法な貸付けの事案があるとして注意を促しています。同庁が貸金業に該当するおそれがあるものとして挙げているのは、譲渡した債権の回収が業者から売主に委託されていて、売主が集金できなかった場合に売主が債権を買い戻すこととされているもの、売主自身の資金により業者へ支払をしなければならないこととされているもの、そして受け取る金銭が債権額に比べて著しく低額であるものです(2026年9月8日確認)。

「税金の滞納があっても大丈夫」という言葉は、契約の中身を何ひとつ説明していません。確かめるべきなのは、売掛先が支払わなかったときの損を最後に誰が負う設計になっているかです。そこが売主のままなら、売買として完結していません。制度としての位置づけはファクタリングは違法なのかで扱っています。

給与ファクタリングについても書いておきます。金融庁は、業として、個人が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは貸金業に該当するとしています(2026年9月8日確認)。当サイトは、個人向けの取引を利用の対象として案内していません。不安があるときの窓口として、同庁は金融サービス利用者相談室(0570-016811)、消費者ホットライン(188)、警察相談専用電話(#9110)を案内しています。

申込みの前に、確かめる順番を決めておく

滞納があるときほど、相談の場で聞かれるままに話が進みます。先に確かめる項目を決めておいてください。

先に決める・確かめること 何のために確かめるのか
売ろうとしている売掛金に差押えが及んでいないか 差押えの効力は売掛先への債権差押通知書の送達で生じます。売るという前提が残っているかを最初に確かめるため
納期限から何か月経っているか 換価の猶予の申請期限(納期限から6か月以内)に間に合うかどうかを判断するため
督促状が届いているか、指定された期限はいつか 差押えにつながる期限が、その書面に書かれているため
契約書に買戻しや、売主自身の資金による支払の定めがないか 実質が貸付けにあたる取引を避けるため
受け取る金額が債権額に比べて著しく低額でないか 金融庁が注意喚起で挙げている類型に当たらないかを確かめるため

売る債権の側も同時に整理します。金額と支払期日が決まっていること、納品や役務の提供が終わっていることは、滞納の有無とは別に見られる部分です。赤字が続いている状況での考え方は赤字でもファクタリングは使えるかにまとめました。各社が何を公表しているかはファクタリング会社の比較で、表記のまま並べています。

確認の順番

整理します。ファクタリングは債権の売買です。滞納していること自体を利用できない理由として定めた公的なルールは、確認できませんでした。公的な保証を使う融資が「税金を滞納し完納の見通しが見込めない」場合を利用の対象外として公表しているのとは、そこがはっきり違います。

ただし、滞納は別の経路で効きます。督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないときは財産を差し押えなければならないと定められており、売掛金の差押えは売掛先への債権差押通知書の送達によって効力が生じます。売ろうとしている売掛金が、その流れの中に入っていないかどうかが分かれ目です。差押えの通知は売掛先にも届きます。

そして、待っている間も延滞税・延滞金は増えます。2026年に適用される割合は、国税が納期限の翌日から2か月まで年2.8%、それ以後は年9.1%です。納期限から6か月以内であれば、換価の猶予を申請するという選択肢が残っています。差押えの手前で止められるなら、そちらが先です。

最後に、「滞納でも可」という言葉だけで相手を決めないでください。買戻しの定めがないか、売主自身の資金で払う約束になっていないか、買取代金が著しく低額になっていないか。この3点は、滞納の話とは切り離して契約書で確かめます。

ほかの状況別の論点は利用条件・ケース別から辿れます。猶予制度の申請や個別の滞納の扱いは所轄の税務署・年金事務所へ、契約書の条項の意味や個別の取引が貸金業に当たるかどうかの判断は弁護士へ、税務上の扱いは税理士へご確認ください。

この記事の出典

手数料・条件・手続きは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、申込みの前に各社の公式ページで確かめてください。