赤字・債務超過

債務超過・赤字でファクタリングの審査はどこを見るか|方式で変わる効き方

破産法16条1項が定める債務超過は、当期の赤字とは別の状態です。自社の数字が支払の原資に関わるのは、回収金を預かって送る約束と買戻しの約束が契約に残るときに限られます。掲載20社の方式13社分・償還請求権8社分の表記を並べ、確かめる順番まで整理します。

決算書が赤字のまま、あるいは純資産がマイナスのまま資金繰りを回しているとき、申込みの前に気になるのは「この数字を出したら終わりではないか」という点だと思います。

先に結論を書きます。ファクタリングは債権の売買なので、買い取った側に代金をもたらすのは売掛先からの入金です。自社の資金が支払の原資になるのは、契約に「回収金を自社が預かって送る」約束か、「売主が買い戻す」「売主自身の資金で払う」という約束が残っているときに限られます。そして、その約束が残るかどうかは、2社間か3社間かという方式と、契約書の条項で決まります。自社の財務の数字が効いてくる場面は、ここに集まっています。

ただし、これは「債務超過でも通る」という意味ではありません。買い取るかどうかは会社ごとの判断で、当サイトは審査の結果や入金の速さを保証しません。各社が何をどこまで確認しているのかは公表されていないため、合否の線を示すこともできません。

そこでこの記事では、まず破産法16条1項の定義を使って「赤字」と「債務超過」を分けます。次に、入金の経路が方式でどう変わるのかを法務省の説明で確かめ、掲載20社のうち方式を公表している13社、償還請求権に触れている8社、債権譲渡登記に触れている6社の表記を並べます。最後に、申込みの前に確かめる順番を4段階にします。赤字でも申し込めるのかという可否そのものと、税金の滞納が絡む場合の扱いは赤字でもファクタリングは使えるのかで扱っているため、ここでは繰り返しません。審査の全体像はファクタリングの審査は何を見るのかにあります。

「債務超過」は、当期の赤字とは別の状態を指している

同じ「うちは数字が悪い」でも、赤字と債務超過は別の状態です。混ぜたまま考えると、関係のない心配をして、確かめるべき条項を読み落とします。

債務超過には法令上の定義があります。破産法16条1項は、法人の破産手続開始の原因について、「債務者が法人である場合に関する前条第一項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。」と定めています。同条2項は「前項の規定は、存立中の合名会社及び合資会社には、適用しない。」としています。

読み取れるのは2つです。1つめは、債務超過は財産と債務の大小の話であって、当期の損益の話ではないということです。赤字は損益計算書に出てくる期間の結果で、債務超過は一時点の財産の状態です。何期も赤字が続いていても債務超過になっていない会社はありますし、単年の損失で一気に債務超過に入る会社もあります。2つめは、条文が「その財産をもって完済することができない状態」と書いていることです。貸借対照表に載っている簿価で判定するとは書かれていません。資産の評価のしかたで結論が変わりうるので、純資産の欄がマイナスかどうかは目安として見てください。決算書のどこに何が出るかはファクタリングと貸借対照表で扱っています。

ここで確かめておきたいのは、この2つがファクタリングの手続きのどこにも登場しないという点です。売る対象は売掛債権で、代金の原資は売掛先からの入金です。自社の財産の状態が関係してくるのは、自社がお金を払う側に立つ約束が契約に残っているときだけです。どういう場合にそうなるのかを、次に見ます。

売掛先がファクタリング会社へ直接払うのは、通知か承諾があるときだけ

まず押さえるのは、売掛先が誰に払うのかです。ここが方式の違いそのものです。

法務省は、債権譲渡登記の効力について、「債務者以外の第三者との関係で、民法上の確定日付ある証書による通知があったものとみなされる」ものだと説明しています。一方で債務者(この取引では売掛先)については、「登記をしたことを証する登記事項証明書の交付を伴う通知をしてはじめて、債権譲渡の事実を主張することができる」としています。債務者が承諾した場合も対抗要件が備わります。民法467条が定める通知または承諾がこれにあたります。

つまり、売掛先へ通知も承諾もしていない状態では、売掛先に対して「債権はこちらに移った」と主張できません。売掛先は従来どおり自社へ払います。これが2社間の形です。自社はその入金を預かり、同額をファクタリング会社へ送ることになります。

2社間と3社間で、ファクタリング会社へ代金が渡る経路を上下に並べた関係図。上段の2社間では売掛先が支払期日に自社へ入金し、自社が回収金をいったん預かって同額を送金するため、自社の口座を通り送金の約束が残る。下段の3社間では通知または承諾があるため売掛先がファクタリング会社へ直接入金し、自社は回収金を預からず、自社の口座を通らない
図1:自社の口座を通るのは2社間だけ。通るかどうかで残る約束が変わります法務省「債権譲渡登記制度 第1 債権譲渡登記制度とは?」(2026年10月21日確認)と民法467条の通知・承諾の定めをもとに、入金の経路だけを整理しました。実際の回収方法と送金の期限は各社の契約書の定めによります。

3社間では、通知または承諾があるため、売掛先はファクタリング会社へ直接払えます。自社は回収金を預かりません。方式そのものの流れは2社間ファクタリングとはと3社間ファクタリングとは、回収の段取りはファクタリング後の回収にまとめています。

法務省「債権譲渡登記制度 第1 債権譲渡登記制度とは?」のページ。債権譲渡登記をしても債務者に対しては債権譲渡の事実を主張できず、登記事項証明書の交付を伴う通知をするか債務者が承諾したときに債務者についても対抗要件が備わることが示されている
一次情報の引用:登記だけでは売掛先に主張できないと説明している箇所引用元は法務省「債権譲渡登記制度 第1 債権譲渡登記制度とは?」です。画像は2026年9月25日に取得したもので、本文で引用した記載は2026年10月21日に同じページで再確認しました。ページの内容と権利は法務省に帰属します。

この違いは、債務超過や赤字の話に直接つながります。自社の口座を通る形では、入金を他の支払へ回さずに送る、という約束が残ります。資金繰りが詰まっている状態ほど、この約束は重くなります。自社の口座を通らない形なら、その約束はそもそも生まれません。

自社の資金が原資になる約束は、金融庁が注意喚起している形と重なる

残る約束のうち、より重いのが買戻しです。ここは金融庁が注意喚起を出している領域とそのまま重なります。

金融庁は、ファクタリングを「一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。」と説明しています。そのうえで、貸金業に該当するおそれがある取引として、「売主が債権を買い戻すこととされている」もの、「売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている」ものを挙げています。

さらに、同じページには次の記載があります。「ファクタリングが貸金業に該当するかについては、契約書にノンリコース(売却した売掛債権等が返済不能になっても売却した事業者に返済義務は生じないこと)の規定があるかなどの形式的な要素だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されるものですので、注意が必要です。」

言葉を整えると、こうなります。買戻しや自己資金での支払が約束として入っていると、支払の原資は売掛先ではなく自社になります。その形は、金融庁が貸金業に該当するおそれがあるとして注意喚起している取引と重なります。債務超過や赤字であること自体は、この注意喚起のどの項目とも関係がありません。にもかかわらず「数字が悪いので条件はこうなります」と説明されて受け入れると、入り口がここになります。償還請求権という言葉の意味は償還請求権とは、契約書を見せない相手の扱いは契約書を渡さない業者で扱っています。

方式を公表しているのは20社中13社。3社間に触れているのは5社

では、方式は申込みの前に分かるのか。当サイトは掲載20社について18項目を記録し、項目ごとに出典URLと確認日を持たせています。そのうち「2社間/3社間」の記載を公式ページで確認できたのは13社でした。記録した表記をそのまま並べます。

会社 方式について記録した表記 確認日
アクセルファクター 「2社間ファクタリング」という方式を利用する事で債権譲渡通知を留保 2026年8月19日
ビートレーディング 「2者間ファクタリング」と「3者間ファクタリング」 2026年8月19日
OLTA クラウドファクタリング 2者間ファクタリング 2026年8月18日
PAYTODAY 2社間ファクタリング 2026年8月19日
labol(ラボル) フリーランス・個人事業主向けの請求書の買取サービス(2者間ファクタリング) 2026年8月19日
QuQuMo 2社間ファクタリング 2026年8月18日
うりかけ堂 2社間ファクタリングの場合、売掛先への通知はありません 2026年8月18日
トップ・マネジメント 2社間ファクタリング/3社間ファクタリング(商品案内) 2026年8月18日
ベストファクター 2社間、3社間ファクタリングのご利用が可能 2026年8月18日
えんナビ 2社間、3社間に対応 2026年8月18日
ウィット 取引先通知が不要の2社間ファクタリング 2026年8月19日
ジャパンマネジメント 2社間ファクタリング/3社間ファクタリング/医療・介護報酬債権買取 2026年8月18日
Flex Capital ファクタリング 2社間ファクタリング(同社の説明) 2026年8月18日

並べると分かるのは、3社間に触れている会社が限られていることです。13社のうち、2社間と3社間の両方を挙げているのは5社で、残る8社は2社間だけを記載しています。

掲載20社を公表されている方式の記載で3つに分けた積み上げ棒と、3項目の記録社数を示した数値カード。2社間だけを記載が8社、2社間と3社間の両方を記載が5社、方式の記載を確認できなかったのが7社。記録社数は2社間3社間が13社、償還請求権が8社、債権譲渡登記が6社
図2:20社を記載の内容で3つに分けた内訳と、3項目の記録社数掲載20社の公式ページから記録した表記を、当サイトが区分ごとに数えました(2026年8月18日・19日確認)。「2者間」と表記している会社も同じ方式を指すものとして2社間に数えています。順位や点数は付けていません。

残る7社については、方式の記載を公式ページで確認できませんでした。記載がないことは、その方式に対応していないという意味ではありません。記録の作り方は比較・評価の基準に書いています。自社の口座を通さない形で進めたいなら、3社間に触れている会社を先に当たるのが短い道です。各社の表記を方式ごとに横に並べたものは3社間ファクタリングの比較にあります。

ただし、3社間は売掛先へ通知または承諾を求める形です。売掛先との関係を踏まえて選ぶ話になるので、費用だけで決めないでください。

償還請求権に触れている8社は、いずれも「無い」旨の記載だった

買戻しの約束について、公式ページで記載を確認できたのは8社です。その8社はいずれも、償還請求権が無い旨を記載していました。

会社 償還請求権について記録した表記 確認日
アクセルファクター ノンリコース(遡求請求無し) 2026年8月19日
ビートレーディング 償還請求権がない(同社の説明) 2026年8月18日
OLTA クラウドファクタリング 弊社のファクタリングは償還請求権のない(ノンリコース)契約 2026年8月19日
うりかけ堂 うりかけ堂のファクタリングは償還請求権がないノンリコースと呼ばれる取引 2026年8月19日
ベストファクター 償還請求権なしの完全買取 2026年8月18日
No.1(ナンバーワン) 償還請求権の無いファクタリング(ノンリコース)お客様に保証を求めない契約 2026年8月19日
えんナビ ノンリコース契約(償還請求権ナシ) 2026年8月18日
ジャパンマネジメント 償還請求権なし(ノンリコース) 2026年8月18日

残る12社は、この項目の記載を公式ページで確認できませんでした。買戻しの定めがあるという意味でも、無いという意味でもありません。問い合わせと契約書で確かめる項目として残ります。

そして、記載がある8社についても、金融庁の説明をもう一度読んでください。貸金業に該当するかどうかは、ノンリコースの規定があるかなどの形式的な要素だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断される、とされています。サイトに「ノンリコース」と書かれていることは、契約書の条項を読まなくてよい理由にはなりません。回収金をいつまでに送るのか、送れなかったときにどうなるのか、という2点が条項として書かれているかを見てください。

なお、売掛先が支払えなかった場合の負担が誰にあるのかという論点は、自社の財務とは別の軸です。売掛先の側が見られる理由は売掛先の信用力はなぜ重視されるのかにまとめています。

債権譲渡登記は、自社の信用情報とは別の手続き

債務超過という言葉と一緒に心配されやすいのが、債権譲渡登記です。ここは誤解を解いておきます。

登記は、法務省の説明にあるとおり、債務者以外の第三者との関係で対抗要件を備えるための手続きです。自社の財務状態を評価して記録する制度ではありませんし、信用情報機関に事故として登録される仕組みでもありません。同じ債権が二重に譲渡されたときに、どちらが優先するかという場面のための制度です。登記の有無で変わるのは、第三者に対して主張できるかどうかと、費用と手間です。費用の内訳は債権譲渡登記の費用、終わったあとの抹消は債権譲渡登記の抹消で扱っています。

登記について記載を確認できたのは6社でした。

会社 債権譲渡登記について記録した表記 確認日
アクセルファクター 必須ではございません。審査結果によっては設定をお願いすることもございます 2026年8月19日
OLTA クラウドファクタリング 利用規定で定める一部の場合を除き、債権譲渡登記も行いません 2026年8月18日
PAYTODAY 弊社では債権譲渡登記を行っておりませんので、スムーズかつ費用を抑えた上での取引が可能です 2026年8月19日
QuQuMo 取引先への通知や登記は一切不要(同社の説明) 2026年8月18日
ベストファクター 登記せずにご利用いただくこともできます 2026年8月19日
ジャパンマネジメント 原則として2社間ファクタリングは債権譲渡登記の留保も可能です 2026年8月19日

6社の表記には、「必須ではない」「行わない」「留保も可能」という書き方が並びます。アクセルファクターの表記だけは、審査結果によっては設定を求めることがあると続けています。登記をする場合は費用が増えるので、見積りを受け取ったときに、手数料のほかに何がかかるのかを確かめてください。費用の全体像はファクタリングの手数料とはにまとめています。

申込みの前に確かめる順番は4段階

整理します。債務超過は破産法16条1項が定める財産の状態で、当期の赤字とは別の問いです。そのどちらも、代金の原資である売掛先からの入金には影響しません。自社の資金が原資になるのは、回収金を預かって送る約束か、買い戻す約束が契約に残るときです。その約束が残るかどうかは、方式と契約書の条項で決まります。

申込みの前に確かめる4段階と、それぞれをどこで確かめるかを並べた工程図。1は赤字か債務超過かの切り分けを決算書と破産法16条1項で、2は方式を各社の公表表記で、3は回収金の送金と買戻しの定めを契約書の条項で、4は債権譲渡登記を各社の公表表記と見積りで確かめる
図3:1は自社の書類で終わり、2から4は申込先を決めてから確かめます破産法16条1項(2026年10月21日にe-Gov法令検索で確認)と掲載20社の公表表記(2026年8月18日・19日確認)をもとに、当サイトが順番として整理しました。通過の可否を判定するものではありません。

順番を逆にしないでください。先に申込先を探しても、自分が赤字なのか債務超過なのかを分けていなければ、相手の説明を検討できません。逆に、1段階めは決算書があればその日のうちに終わります。

最後にもう一度書きます。ここまで通しても、買い取ってもらえることは保証されません。各社は通過率にあたる数値を公表しておらず、当サイトも審査の結果や入金の速さを保証しません。できるのは、自社の数字が関係する場面を限定して、そこを条項で確かめることです。

条件から候補を絞るならファクタリング会社の比較、審査まわりのほかの論点は審査からたどってください。債務超過の状態での資金調達は、取引全体の判断に関わります。契約の前に、弁護士・税理士など権限のある専門家へ確認してください。

この記事の出典

手数料・条件・手続きは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、申込みの前に各社の公式ページで確かめてください。