ファクタリングの仕訳

ファクタリングの仕訳|2社間と3社間で変わる記帳の場面と勘定科目の考え方

売掛債権を譲渡しても売上は立ちません。動くのは売掛金と入金額、そして差額の費用です。3社間は2場面、2社間は回収と送金を加えた4場面で記帳が発生します。勘定科目の名称が法令で定められていないことも含め、会計基準と国税庁の資料で確認できる範囲を整理します。

ファクタリングの記帳でつまずきやすいのは、「いくらを」ではなく「いつ、いくつの場面で」のほうです。金額は入金明細を見れば分かります。分かりにくいのは、譲渡の契約日と入金日が別になること、そして2社間では自分が回収した資金をファクタリング会社へ送金する場面まで記帳が続くことです。

もうひとつ先に押さえておきたいのが、勘定科目の名称が法令で決まっていないという点です。差額をどの区分に置くかという論点とあわせて、ファクタリングは損益計算書のどこに出る?で条文から確認しています。ですから「この取引の正しい科目名はこれ」という一覧を作ることはできません。代わりに本記事では、その1行が何を記録しているのかという考え方の側から整理します。

この記事では、記帳が発生する場面を契約の型ごとに数え、それぞれで何が何に置き換わるのかを、金融庁の注意喚起・企業会計基準第10号・国税庁の資料で確認できる範囲だけで並べます。貸借対照表の科目の入れ替わりはファクタリングと貸借対照表で別に扱っています。自社の取引をどの科目でどう処理するかという個別の当てはめは税務・会計の領域にあたるため、当サイトでは行いません。

譲渡の仕訳は、売上を立てる仕訳ではない

最初に外しておきたい誤解があります。譲渡したときに売上を計上する仕訳を切る必要はありません。

金融庁は、ファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です」と説明しています。売買の対象になっているのは、すでに手元にある債権です。その債権は、商品やサービスを提供して売上を計上したときに生じています。

つまり、売上を立てる仕訳は譲渡より前に済んでいます。ファクタリングの記帳で扱うのは、その売掛金がどこへ行ったのかという後半部分だけです。ここで再び売上を立てると、同じ取引を二重に計上することになります。

では差額はどうなるのか。企業会計基準委員会が公開している企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」は第11項で、金融資産の消滅を認識した場合に「当該金融資産又は金融負債の消滅を認識するとともに、帳簿価額とその対価としての受払額との差額を当期の損益として処理する」と定めています。額面と実際に受け取った金額との差は、譲渡した期の損益に出るということです。

記帳の骨格は、この2つだけで決まります。売掛金を消すこと、そして額面と入金額の差を当期の損益として出すこと。あとは、それが何回に分かれるかという話になります。

記帳が動く場面は、契約の型で変わる

同じ1件の譲渡でも、記帳の回数は契約の型によって変わります。3社間では、売掛先がファクタリング会社へ直接支払うため、自社の帳簿は入金までで動き終わります。2社間では、売掛先からの入金を自分が受け取り、それをファクタリング会社へ送金するところまで続きます。

3社間は譲渡契約と入金の2場面で記帳が終わり、2社間は譲渡契約・入金・売掛先からの回収・ファクタリング会社への送金の4場面で記帳が発生することを、借方と貸方の並びとともに横に並べた図
図1:契約の型で、帳簿が動く場面の数が変わる額面1,000・入金950・差額50と仮定した計算例です。契約の型と回収の担い手は金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」(2026年9月4日確認)によります。科目名は法令に定めがないため、記録の内容を示すための例として置いています。

回数が違うだけで、記録している内容そのものは変わりません。2社間で増える2場面は、自分の資金ではないものを一時的に預かって引き渡すという部分です。ここを売上や雑収入として受けてしまうと、帳簿の上で自社の資金と混ざります。

契約の型そのものの違いは2社間ファクタリングとはと3社間ファクタリングとはで扱っています。

3社間は、2場面で記帳が終わる

売掛先の承諾を得て譲渡する形では、記帳は次の2場面です。以下は額面1,000、入金950、差額50と仮定した計算例で、単位は省略しています。

場面 借方 貸方 その1行が記録していること
① 譲渡契約が成立し、売掛先へ通知・承諾を得た 未収入金 1,000 売掛金 1,000 売掛先へ請求する権利が、ファクタリング会社から入金を受け取る権利に置き換わった
② ファクタリング会社から入金された 普通預金 950/譲渡差額の費用 50 未収入金 1,000 受け取る権利が消え、入金額と差額に分かれた
③ 本来の支払期日が来た 記帳なし 記帳なし 売掛先はファクタリング会社へ直接支払うため、自社の帳簿は動かない

①で使っている未収入金は、「売掛金ではないが、入金を待っている状態」を表すための置き場所です。売掛金のまま残すと、売掛先へ請求できる債権がまだあるように見えます。逆に、譲渡した時点で普通預金を増やすこともできません。まだ入っていないからです。この2つの間を埋めるために、いったん別の科目へ移します。

②で初めて金額が確定します。額面1,000に対して入金が950なら、差の50がこの期の費用です。ここで注意したいのは、費用として出るのが入金額が確定した1回だけだという点です。分割で入金される契約なら、その回ごとに差額が確定します。

2社間では、回収と送金の2場面が増える

売掛先へ通知しない形では、支払期日に入金してくるのは売掛先です。その資金をファクタリング会社へ送金するまでが自社の作業になります。

場面 借方 貸方 その1行が記録していること
① 譲渡契約が成立した 未収入金 1,000 売掛金 1,000 3社間と同じく、請求権が入金を受け取る権利に置き換わった
② ファクタリング会社から入金された 普通預金 950/譲渡差額の費用 50 未収入金 1,000 3社間と同じ。ここで差額が費用として確定する
③ 売掛先から入金された 普通預金 1,000 預り金 1,000 入ってきた資金は自社の収益ではなく、引き渡すまで預かっているもの
④ ファクタリング会社へ送金した 預り金 1,000 普通預金 1,000 預かっていた資金を引き渡し、預り金が消えた

③と④は、金額が行って戻るだけで損益に影響しません。それでも独立した2行として残す理由は2つあります。ひとつは、預かっている状態が帳簿に見えるようにするため。もうひとつは、送金が遅れたときにその事実が残るようにするためです。

金融庁は、譲渡した債権の回収がファクタリング業者から売主に委託されており、売主が集金できなかった場合に売主が債権を買い戻すこととされている場合などについて、貸金業に該当するおそれがあると指摘しています。回収と送金の記録は、この点を後から確認するための材料にもなります。

なお③で使っている預り金は、あくまで「自社のものではない資金を持っている」ことを表す科目の一例です。どの科目を使うかは会社ごとに決めることになります。大事なのは名前ではなく、その残高を見たときに引き渡す義務が残っていると読めることです。

勘定ごとに見ると、何が何に置き換わったかが分かる

仕訳を1行ずつ追うより、勘定ごとにまとめたほうが取引の全体像はつかみやすくなります。3社間の①②を転記すると、次のようになります。

売掛金は貸方に1,000で残高が減り、未収入金は借方1,000と貸方1,000で差引ゼロになり、普通預金は借方950で増え、譲渡差額の費用は借方50が出ることを勘定ごとに並べ、額面1,000が入金950と差額50に分かれることを帯で示した図
図2:4つの勘定と、額面1,000の行き先額面1,000・入金950・差額50と仮定した計算例です。差額を当期の損益として処理することは、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第11項(2026年9月4日確認)によります。

見てのとおり、未収入金は借方と貸方の両方に同じ金額が立ち、差引ゼロになります。通過するだけの科目なので、期末に残高が残っていたら、譲渡したのに入金がまだという状態か、記帳の漏れです。決算のときの点検箇所として覚えておくと役に立ちます。

差額の割合は契約ごとに違います。ここで置いた5%は、記帳の構造を見るための仮定にすぎません。実際に手元へいくら入るのかという計算はファクタリングの受取額はいくらになる?で扱っています。

記帳の形が変わる3つの分岐

同じ「ファクタリングの仕訳」でも、資料によって形が違って見えることがあります。前提が違うためです。分岐は3つあり、どれも契約書と入金予定を見れば記帳の前に確認できます。

譲渡日と入金日が同じ日かどうか、回収した資金を自社がいったん受け取るかどうか、買戻しや償還請求の定めが契約書にあるかどうかの3点で、記帳の回数と前提が変わることを示した判断フロー図
図3:記帳を始める前に確認する3点3点目の判断のもとになる考え方は、金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」(2026年9月4日確認)によります。自社の取引の当てはめは税理士へ確認してください。

1つ目は、譲渡した日と入金される日が同じかどうかです。同じ日に完結するなら、未収入金を挟まず、売掛金から直接、普通預金と差額の費用へ振り替える形になります。記帳は1回です。別の日になるなら、譲渡日と入金日で2回に分かれます。同じ取引でも見た目が変わるのは、ここが違うからです。

2つ目は、回収した資金を自社がいったん受け取るかどうかです。これが2社間と3社間の差にあたります。

3つ目は、買戻しや償還請求の定めが契約書にあるかどうかです。これは記帳の回数ではなく、譲渡として記帳してよいのかという前提に関わります。詳しくは後述します。

差額の中身を分けて記録する

②で費用として出る差額には、買取手数料以外のものが混ざっていることがあります。振り込まれた金額と額面の差を1行でまとめてしまうと、あとから内訳を分けられません。

差額に含まれうるもの 分けて記録する理由 確認する場所
買取手数料 譲渡そのものの対価にあたる部分。次回の条件を比べるときの基準になる 契約書、買取に関する計算書
事務手数料・審査に関する費用 手数料とは別に表示されることがあり、合算すると実質の負担が見えなくなる 見積書、精算書
債権譲渡登記に関する費用 登録免許税と司法書士報酬では性質が違う。登記を行った契約でだけ発生する 登記の費用明細、司法書士からの請求書
振込手数料 誰の負担かが契約で決まっている。自社負担なら差し引かれて入金される 契約書の費用条項、入金明細

手数料以外にどのような費用が発生しうるかはファクタリングで手数料以外にかかる費用に、債権譲渡登記を行った場合の登録免許税は債権譲渡登記の費用はいくら?にまとめています。

内訳を分ける作業は、譲渡のたびに行うほうが確実です。決算になってから精算書を集め直すと、どの契約から出た費用なのかが分からなくなります。

消費税は非課税取引として区分する

記帳のときにもうひとつ判断が要るのが、消費税の区分です。国税庁のタックスアンサー「No.6201 非課税となる取引」は、非課税となる取引の例として「(2)有価証券等の譲渡」を挙げ、その中に金銭債権などの譲渡を含めています(令和7年4月1日現在法令等)。売掛債権は金銭債権にあたります。

国税庁タックスアンサー「No.6201 非課税となる取引」のページ冒頭。消費税の性格から課税対象としないものと社会政策的な配慮から非課税とするものが並び、有価証券等の譲渡の項に金銭債権などの譲渡が含まれている
非課税の一覧が示されている一次情報国税庁「No.6201 非課税となる取引」の冒頭。この記事で引用している有価証券等の譲渡の項は、このページの一覧にあります(2026年9月4日取得)。ページの内容と権利は国税庁に帰属します。

なお、差額そのものを「ファクタリング手数料」という名称で個別に取り上げた記載は、当サイトが確認した範囲のタックスアンサーには見当たりませんでした。手数料の消費税をどう扱うかについてはファクタリングの手数料に消費税はかかる?で、国税庁の説明で確認できる範囲を整理しています。

非課税売上として記録すると、課税売上割合の計算に関係してきます。国税庁「No.6405 課税売上割合の計算方法」は、総売上高に加える金銭債権(資産の譲渡等の対価として取得したものを除きます)の譲渡対価の額について、その譲渡対価の額の5パーセントに相当する金額とされていると説明しています。括弧書きの除外に当たるかどうかで扱いが変わるため、ファクタリングと課税売上割合で条文の並びから確認しています。

買戻しの定めがあるときは、前提から変わる

ここまでは、債権の売買として記帳できることを前提にしてきました。その前提が崩れる場合があります。

金融庁は、ファクタリングが貸金業に該当するかについて、契約書にノンリコース(売却した売掛債権等が返済不能になっても売却した事業者に返済義務は生じないこと)の規定があるかなどの形式的な要素だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されると述べています。あわせて、回収が売主に委託されていて集金できなかった場合に売主が債権を買い戻すこととされている場合などを、注意すべき例として挙げています。

買い戻す義務が実質的に残っている契約では、企業会計基準第10号が定める金融資産の消滅の認識要件を満たさない可能性があります。要件を満たさなければ、売掛金は資産に残ったままになり、この記事で並べた仕訳の前提そのものが変わります。要件の中身と契約書のどこを読めばよいかはファクタリングと貸借対照表で扱っています。

記帳の形を先に決めてから契約書を読むのではなく、契約書を読んでから記帳の形を決める順番にしてください。会社概要を確認できない事業者や、買戻しの条件が明示されない契約は、記帳の問題以前に避ける対象です。

譲渡ごとに残しておく記録

仕訳を切るだけでは、あとから見返したときに事実を再現できません。譲渡のたびに次の項目を1件1行で残しておくと、決算のときも、税理士へ説明するときも早く済みます。

  • 譲渡した日、入金された日、本来の支払期日の3つ
  • 対象の売掛先と請求書番号、額面の金額
  • 実際に入金された金額と、額面との差額
  • 差額の内訳。買取手数料、事務手数料、登記関係の費用、振込手数料を分けて書きます
  • 契約の型(2社間か3社間か)と、買戻し・償還請求に関する条項の有無
  • 2社間の場合は、売掛先から回収した日とファクタリング会社へ送金した日

日付を3つとも残す理由は、図3の1つ目と2つ目の分岐を後から確認できるようにするためです。差額の内訳を分ける理由は、合算した1つの数字からは分解できないからです。

保存の期間も決まっています。国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」は、法人が帳簿と取引等に関して作成または受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならないと説明しています(令和7年4月1日現在法令等)。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度などは10年間です。譲渡ごとの計算書や精算書も、この対象に含まれる書類として扱われます。

判断が要る部分は、専門家に確認する

この記事で示したのは、記帳が何回に分かれ、どの1行が何を記録しているのかという構造です。科目名の選び方、費用をどの区分へ置くか、消費税の当てはめといった判断は、会社ごとの事情によって変わります。当サイトでは、税務・法律の個別判断は行いません。

判断材料をそろえるほうから始めてください。契約の型、手数料の範囲、償還請求権の有無といった条件は、各社の公表値をファクタリング会社の比較に出典と確認日を添えて並べています。会計と税金に関するほかの論点は会計・税金のカテゴリで扱っています。

この記事の出典

手数料・条件・手続きは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、申込みの前に各社の公式ページで確かめてください。