設立や開業からまだ1年ほどで、決算書も2期分の申告書類も出せない状態だと、申込みの前に「業歴で切られるのではないか」という不安が先に来ると思います。
先に結論です。業歴の年数を条件として書いているのは、融資の制度の側です。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、ご利用いただける方を「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」としています。業歴が、制度の対象を決める線として明記されています。一方、当サイトが掲載20社の公式ページから記録した18項目には、業歴の年数を条件として示した項目が1件もありません。業歴は条件として現れず、必要書類の中身に姿を変えて現れます。
ただし、これは「業歴が短くても通る」という意味ではありません。買い取るかどうかは会社ごとの判断で、当サイトは審査の結果や入金の速さを保証しません。業歴の扱いが公表されていないということは、通る線も、落ちる線も、外から確かめられないということです。確かめられるのは、書類として何を求められているかだけです。
そこでこの記事では、公表されている書類の表記だけを材料にします。必要書類を公表している9社の表記を並べ、そこから「開業からの月数で足りなくなるもの」と「決算期を越えた回数で決まるもの」を分けます。次に、請求書がまだ出ていない段階で何が問題になるのかを買取の対象の記載から確かめ、最後に法人と個人事業主で会社側の手段が変わる点を法務省の説明で押さえます。
申込みそのものが何か月目から可能なのかという可否の話はファクタリングは開業何ヶ月から利用できる?で扱っているので、ここでは繰り返しません。審査が何を見ているのかという全体像はファクタリングの審査は何を見るのか、公表されている基準の範囲はファクタリングの審査基準はどこまで公表されているかにあります。
業歴を条件に書いているのは、融資の制度の側
まず、業歴という言葉がどこに書かれているのかを確かめます。書かれている場所が分かると、どこを読めばよいかが決まります。
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、ご利用いただける方を「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」と公表しています。資金のお使いみちは「新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金」、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金が10年以内(うち据置期間5年以内)です。担保・保証人は「お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます」とされています。
ここで注目したいのは、7年という数字そのものではありません。融資の制度では、業歴が対象を決める線として文章になっているという点です。線が公表されているので、自分が対象に入るかどうかを申込みの前に自分で判断できます。公庫の手続きの流れは日本政策金融公庫の融資はどう申し込むのかにまとめています。
ファクタリングの側は、取引の種類が違います。金融庁は、ファクタリングを「一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。」と説明しています。売る対象は売掛債権で、代金の原資は売掛先からの入金です。買う側がまず見るのは、売ってもらう債権と、その支払をする売掛先になります。
そして、当サイトが20社から記録した18項目――手数料、買取可能額、入金までの目安、審査結果までの目安、2社間と3社間、契約の型、個人事業主の利用、オンライン完結、必要書類、債権譲渡登記、償還請求権、受付時間、手数料以外の費用、買取の対象、対応エリア、所在地、代表者、設立――の中に、申込者の業歴を条件として示した項目はありません。
言い換えると、業歴で切られるかどうかを公表表記から読み取ることはできません。読み取れるのは、求められている書類を自分がいま用意できるかどうかです。そこで、必要書類の表記を1社ずつ見ます。
必要書類を公表しているのは20社中9社。業歴はこの中身に現れる
18項目のうち、必要書類に値を記録できたのは9社です。残り11社は、公式ページに書類の記載を見つけられませんでした。公表の有無は会社の良し悪しではありませんが、公表していない会社については、申込みの前に自分で確かめられる材料がないということになります。
| 会社名 | 必要書類の公表表記 | 開業からの期間に関わる部分 |
|---|---|---|
| アクセルファクター | ①請求書などの売掛金額が確認できる書類、②通帳3か月分の写し、③身分証明書 | 通帳3か月分 |
| ビートレーディング | 審査に必要な書類はたった2点 | 点数だけで、中身の記載なし |
| PAYTODAY | 1.代表者様の本人確認書類 2.売却する対象の請求書 3.直近6カ月以上の入出金明細 4.昨年度の決算書 | 直近6カ月以上の明細と、昨年度の決算書 |
| ペイトナーファクタリング | ご本人確認書類/請求書 | 期間を伴う書類の記載なし |
| うりかけ堂 | ・本人確認書類 ・入出金の通帳(Web通帳含む) ・取引先との契約関連書類(請求書/見積書/基本契約書等) | 通帳(期間の記載なし) |
| トップ・マネジメント | ご本人様確認書類(運転免許証など)、買取りを希望する売掛債権に関する成因資料(請求書、契約書、発注書など)ほか3点 | 「ほか3点」の中身は記載なし |
| ベストファクター | 本人確認書類(免許証・パスポートなど)ほか | 「ほか」の中身は記載なし |
| 日本中小企業金融サポート機構 | 口座の入出金履歴(直近3か月分)と、売掛金に関する書類(請求書・契約書など)の2点 | 口座の入出金履歴 直近3か月分 |
| Flex Capital ファクタリング | 税務申告書類一式(直近2期分)、マネーツリーによる銀行口座連携 | 税務申告書類 直近2期分 |
この9社の表記を分けると、業歴の短い事業者に効いてくる記載は2種類しかありません。
1つめは口座の履歴です。口座に関する書類を挙げているのは5社(アクセルファクター、PAYTODAY、うりかけ堂、日本中小企業金融サポート機構、Flex Capital)で、そのうち期間の数字まで書いているのは3社です。通帳3か月分、直近3か月分、直近6カ月以上と、求める長さがそれぞれ違います。通帳を求められる理由はファクタリングに通帳は必要かで扱っています。
2つめは申告・決算書類です。挙げているのは2社です。PAYTODAYが「昨年度の決算書」、Flex Capitalが「税務申告書類一式(直近2期分)」と公表しています。なお、Flex Capitalは申込みの対象について「個人事業主の方はご利用いただけません」とも公表しているため、個人事業主の場合は書類の前に対象の区分で外れます。決算書や確定申告書の扱いはファクタリングに決算書は必要かとファクタリングに確定申告書は必要かにまとめています。
残りの表記は、本人確認書類と、請求書・契約関連書類です。これらは開業からの時間とは関係なく用意できます。つまり、業歴の短さが引っかかるとしたら、引っかかる場所は口座の履歴と申告・決算書類のどちらかに絞られます。
口座の履歴は月数で、申告書類は決算期の回数で足りなくなる
同じ「期間が足りない」でも、この2つは埋まり方がまったく違います。ここを混ぜると、待てば解決するものと、待っても解決しないものを取り違えます。
口座の履歴は、開業からの月数がそのまま答えになります。直近3か月分を求める記載なら、事業用の口座で入出金が3か月分積み上がっているかどうかで決まります。足りなければ、時間が経てば足ります。逆に言えば、開業から1か月で申し込む場合は、3か月分という記載を満たせません。
申告・決算書類は、月数では決まりません。「昨年度の決算書」や「直近2期分の税務申告書類」は、決算期を越えた回数で決まります。法人なら事業年度を何回終えたか、個人事業主なら確定申告を何回したかです。開業から11か月でも、まだ1回も決算を迎えていなければ用意できません。待つ期間の長さは、開業日と決算期の組み合わせによって変わります。
この分け方には使い道があります。開業から数か月の時点では、申込先の候補が「口座の履歴を求める記載かどうか」で変わります。口座の履歴だけを求める記載であれば、月数が積み上がるのを待つという道があります。申告書類を2期分求める記載がある会社は、待つ対象が月ではなく決算になります。どちらに当たるかは、上の表の右端の列で見分けてください。
なお、期間が足りない書類をどう扱うかは、9社のいずれも公表していません。代わりの資料で足りるのか、それとも受け付けられないのかは、問い合わせなければ分かりません。ここは推測で埋められない部分です。
請求書がまだ出ていない段階は、売る対象そのものが無い
業歴の短さは、もう1か所に現れます。売る対象の有無です。
ファクタリングは債権の売買なので、売る債権が成立していなければ取引が始まりません。買取の対象について記載を記録できたのは20社中5社ですが、この5社の書き方は2つに分かれます。
完了や確定を条件として挙げているのが3社です。OLTAは「買取対象は、売掛先が法人または官公庁で、入金日と入金額が確定している「確定債権」」、日本中小企業金融サポート機構は「すでに仕事が完了している売掛金であれば買取対象になります」、ジャパンマネジメントは「請求が確定している債権、請求後入金待ちの債権。遅延債権・回収不能な債権・虚偽債権は対象外」と公表しています。納品や役務の提供が終わり、請求が確定している状態を前提にした書き方です。
一方、請求前の段階を商品として挙げている会社が2社あります。ビートレーディングは「買取ファクタリング/注文書ファクタリング(将来債権)」、トップ・マネジメントは「見積書・受注書・発注書ファクタリング、オンライン完結型ファクタリングなど」と公表しています。注文書を対象にする型の考え方は注文書ファクタリングとはにまとめています。
創業直後は、受注はあるのに納品前という時期が長くなりがちです。その時期に当てはまるかどうかは、業歴ではなく、その会社が何を買うと書いているかで決まります。ただし、注文書を対象にする型でも、審査の内容や手数料の水準は公表されていません。確定債権の買取と同じ条件になるとは書かれていないため、同じものとして扱わないでください。
もう1つ、1件目の請求書は金額が小さいことがあります。買取可能額の下限は会社ごとに違い、金額で下限を明記している会社と、下限を設けていないと公表している会社に分かれます。条件ごとに並べたものは少額ファクタリングの比較にあります。
法人か個人事業主かで、会社側が取れる手段が変わる
創業直後という状況は同じでも、法人と個人事業主では、ファクタリング会社の側が使える手段が違います。これは公表表記の読み方に直接効くので、自分の区分を先に決めてください。
法務省は、債権譲渡登記制度を「法人がする金銭債権の譲渡について、債務者以外の第三者に対する対抗要件を備えるための制度です。」と説明し、「登記することができる債権の譲渡人は、法人のみに限定されています。」としています。登記という手段が使えるのは、法人からの譲渡だけです。
このため、同じ「登記は不要」という記載でも、読み方が変わります。債権譲渡登記について記載を記録できたのは20社中6社です。アクセルファクターは「必須ではございません。審査結果によっては設定をお願いすることもございます」と公表しています。法人の場合は、審査の結果によって登記を求められる可能性が記載として残っているということです。求められれば、登記にかかる費用が額面とは別に発生します。費用の内訳は債権譲渡登記にかかる費用で扱っています。
ほかの記載も見ておきます。PAYTODAYは「弊社では債権譲渡登記を行っておりませんので、スムーズかつ費用を抑えた上での取引が可能です」、QuQuMoは「取引先への通知や登記は一切不要」、ジャパンマネジメントは「原則として2社間ファクタリングは債権譲渡登記の留保も可能です」としています。記載が無い14社については、行うのか行わないのかを公表されている材料から判断できません。
個人事業主の場合、登記を前提にした記載はそのまま当てはまりません。確かめる対象は、売掛先への通知の有無と、買取の対象の範囲に移ります。通知が必要になる場面は売掛先への通知が必要になる場合、個人事業主向けの条件は個人事業主向けファクタリングの比較で整理しています。なお、個人事業主の利用について何らかの記載があるのは17社で、そのうち1社は利用できないと公表しています。
申込みの前に用意できるもの、問い合わせないと分からないもの
ここまでの材料を、手元でできることと、聞かなければ分からないことに分けます。
自分で用意できるものは3つです。1つめは事業の開始を示す公的な控えです。個人事業主の場合、国税庁は個人事業の開業届出について「新たに事業を開始した時から1ヶ月以内に提出」、提出先を「納税地を所轄する税務署に提出」としています。提出済みなら控えが残ります。ただし、開業届の控えを必要書類として挙げている会社は、公表されている9社の記載の中には1社もありません。出せば足りるという意味ではないので、使えるかどうかは確認が必要です。
2つめは売掛債権が成立していることを示す一式です。基本契約、発注や受注の記録、納品や検収の記録、請求書を、日付の順に並べられる状態にしておきます。業歴が短い分、過去の実績ではなく、いま進んでいる案件を資料で追える状態が材料になります。実績が無いことを埋めるために書類を作ることは、絶対にしないでください。
3つめは事業用の口座の入出金です。履歴の長さは待てば伸びます。何か月分を求める記載があるかは、上の表で確かめられます。
一方、問い合わせないと分からないことも3つあります。業歴が短い場合に、期間を伴う書類の代わりになる資料があるのか。注文書や発注書の段階を扱うのか、扱う場合の条件は確定債権と同じなのか。法人の場合、登記を求める判断はどの段階で示されるのか。このどれも、20社の公表表記からは読み取れませんでした。
確認するときは、回答の日付と担当者、聞いた条件をそのまま記録してください。公表されていない条件は、確認した記録が自分の唯一の根拠になります。各社の公表値を同じ形で並べたものはファクタリング会社の比較にあります。
最後に、創業直後ほど気をつけたい点を1つ付け加えます。金融庁は、貸金業に該当するおそれがある取引として「売主が債権を買い戻すこととされている」もの、「売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている」もの、「債権の買取代金が、債権額に比べて著しく低額である」ものを挙げています。業歴が短いことを理由にこうした条件を提示された場合は、債権の売買ではない取引になっている可能性があります。契約書の文言で確かめてください。
よくある質問
設立1年未満でも申し込めますか。
申込みを受け付けるかどうかは会社ごとの判断で、掲載20社の公表項目に業歴の条件はありません。そのため、ここで「できる」とも「できない」とも書けません。確かめられるのは、公表されている必要書類を用意できるかどうかです。期間を伴う書類(口座の履歴、昨年度の決算書、直近2期分の申告書類)のうち、どれを求める記載があるかを先に見てください。
決算書が無いと審査に通りませんか。
必要書類に決算書や税務申告書類を挙げているのは、公表している9社のうち2社です。残りの7社の記載には、決算書も申告書類も出てきません。ただし、記載が無いことは「提出を求められない」という意味ではありません。公表されている範囲でそう書かれている、ということだけが分かります。
業歴が短いと手数料は高くなりますか。
手数料の決まり方として業歴を挙げている記載は、記録した18項目の中にありません。手数料として公表されているのは率の範囲や固定の率で、その率をどう決めるかは公表されていません。公表値をそのまま並べたものはファクタリング会社の比較にあります。推測で高くなると書くことはできません。
この記事の出典
手数料・条件・手続きは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、申込みの前に各社の公式ページで確かめてください。
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」 金融庁 / 確認日 2026年10月22日
- 法務省「債権譲渡登記制度の概要」 公的機関 / 確認日 2026年10月22日
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」 公的機関 / 確認日 2026年10月22日
- 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」 公的機関 / 確認日 2026年10月22日
- アクセルファクター「よくあるご質問」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- ビートレーディング「ファクタリングサービス」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- ビートレーディング「お申込みの流れ」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- PAYTODAY 公式サイト 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- ペイトナーファクタリング「必要書類」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- うりかけ堂「よくあるご質問」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- トップ・マネジメント「よくあるご質問」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- トップ・マネジメント「サービス一覧」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月18日
- ベストファクター「よくあるご質問」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- 日本中小企業金融サポート機構「ファクタリングのお申込み」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- Flex Capital ファクタリング 公式サイト 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- OLTA クラウドファクタリング 公式サイト 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- ジャパンマネジメント「よくあるご質問」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- QuQuMo 公式サイト 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月18日