「通帳の写しを提出してください」と案内された時点で、手が止まる方がいます。紙の通帳を発行しない口座しか持っていない、しばらく記帳していない、以前の冊子をなくした、口座を切り替えたばかり。どれも珍しい話ではありません。
先に結論を書きます。冊子そのものが条件になっているわけではありません。確かめられているのは、売掛先からの入金がその口座に記録されているかどうかです。同じ内容を示せる記録を出せるなら、紙の通帳が無いこと自体は行き止まりにはなりません。
ただし「通帳なしでも大丈夫です」と言い切ることもできません。何を認めるかは会社ごとに違い、そもそも必要書類を公表していない会社が半数以上あるからです。この記事では、当サイトが掲載する20社の公表表記を実際に数え、冊子の代わりに出せる4つの形と、それぞれの期間・費用の制約まで確かめます。提出するときの撮り方や、名義が請求書と違う場合の扱いはファクタリングに通帳は必要かにまとめているので、そちらと使い分けてください。
見られているのは冊子ではなく、入金が残っているかどうか
金融庁は、ファクタリングを、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービスと説明し、法的には債権の売買契約であるとしています(2026年9月8日確認)。売買である以上、買う側の関心は、その債権が期日に支払われるかどうかに向きます。
ここで請求書の性質を思い出してください。請求書は、売る側が自分で作る書類です。金額も日付も、作った本人が書いています。それだけでは、その取引が実在し、相手が実際に払ってきたことまでは示せません。そこで、第三者である売掛先から入金があったという別系統の記録が見られます。通帳が挙がるのは、その記録をいちばん手早く確認できる形だったからにすぎません。
つまり、質問の形を変える必要があります。「通帳が無いと使えないのか」ではなく、「売掛先からの入金を示す記録を、自分は何の形で出せるのか」です。ここが決まれば、あとは申込先がその形を認めるかどうかの確認だけが残ります。
分け方が大事です。最初から発行されていない口座なら、そもそも紙は存在しないので、ネットバンキングの入出金明細がそのまま代わりになります。冊子はあるが記帳していないのであれば、記帳してから写すか、明細照会で同じ期間を出します。紛失や口座の切り替えなら、銀行に発行を頼む経路が残っています。状態によって次の一手が違うので、まず自分がどれに当たるかを決めてください。
数えてみると、「通帳」と書いている会社は2社だった
必要書類の話は、印象で語られがちです。そこで当サイトが掲載している20社について、公式ページに書かれていた必要書類の表記を数え直しました。
読み取ってほしい数字は3つです。必要書類の記載を確認できたのは20社中9社。そのうち口座の記録に触れていたのが5社。そして「通帳」という語を使っていたのは2社だけでした。残りは「入出金明細」「口座の入出金履歴」「銀行口座連携」と書いています。
| 会社 | 公式ページに書かれていた必要書類の表記 | 口座の記録への言及 |
|---|---|---|
| アクセルファクター | ①請求書などの売掛金額が確認できる書類、②通帳3か月分の写し、③身分証明書 | あり(通帳・3か月分) |
| ビートレーディング | 審査に必要な書類はたった2点 | 内訳の記載を確認できず |
| PAYTODAY | 1.代表者様の本人確認書類 2.売却する対象の請求書 3.直近6カ月以上の入出金明細 4.昨年度の決算書 | あり(入出金明細・6か月以上) |
| ペイトナーファクタリング | ご本人確認書類/請求書 | 記載を確認できず |
| うりかけ堂 | ・本人確認書類 ・入出金の通帳(Web通帳含む) ・取引先との契約関連書類(請求書/見積書/基本契約書等) | あり(通帳。Web通帳を含むと明記) |
| トップ・マネジメント | ご本人様確認書類(運転免許証など)、買取りを希望する売掛債権に関する成因資料(請求書、契約書、発注書など)ほか3点 | 「ほか3点」の内訳の記載を確認できず |
| ベストファクター | 本人確認書類(免許証・パスポートなど)ほか | 「ほか」の内訳の記載を確認できず |
| 日本中小企業金融サポート機構 | 口座の入出金履歴(直近3か月分)と、売掛金に関する書類(請求書・契約書など)の2点 | あり(入出金履歴・3か月分) |
| Flex Capital ファクタリング | 税務申告書類一式(直近2期分)、マネーツリーによる銀行口座連携 | あり(口座連携) |
表は各社の公式ページの表記のまま載せています(2026年8月19日確認)。並び順は当サイトのデータの登録順で、評価や順位ではありません。残る11社は、必要書類の記載を公式ページで確認できませんでした。
ここで先回りして注意しておきます。表記に口座の記録が出てこないことは、提出を求められないという意味ではありません。「たった2点」「ほか3点」のように、内訳を全部は書いていない表記が含まれるからです。逆に、うりかけ堂のように「Web通帳含む」と明記している会社もあります。記録できた9社の表記の中に、紙の冊子に限ると明記した会社はありませんでした。公表表記から言えるのはここまでで、最終的な可否はその会社に聞くしかありません。各社が何を公表しているかはファクタリング会社の比較で、同じ条件のまま並べています。
冊子の代わりに出せる形は、4つある
同じ入出金を示す方法は1つではありません。制約と費用が違うので、必要な期間から逆算して選びます。
期間の制約は見落とされがちです。三菱UFJ銀行のEco通帳規定には、入出金明細照会の照会期間は当行所定の期間とする、と書かれています(2026年9月8日確認)。画面で遡れる範囲は無制限ではありません。直近3か月分と案内している会社もあれば、6か月以上と案内している会社もあるので、求められた月数まで自分の口座で遡れるかどうかを先に見ておいてください。
費用も形によって違います。ソニー銀行は、お取引明細書(ステートメント)の発行手数料を440円/通、過去のお取引明細書も440円/通と公表しています(2026年9月8日確認)。銀行に発行を頼む経路は、日数と費用がかかる前提で考えます。急いでいるときほど、画面から出せる形で足りるかどうかを先に確認したほうが早く進みます。
4つ目の口座連携は、書類を作らずに済む形です。Flex Capitalは必要書類として「税務申告書類一式(直近2期分)、マネーツリーによる銀行口座連携」と公表しています(2026年8月19日確認)。ただし、連携で何をどこまで取得するのかは公表表記からは読み取れません。連携を使う場合でも、ログインパスワードやワンタイムパスワードそのものを人に伝える必要はありません。申込先の画面で自分が操作する形かどうかを確かめてください。オンライン申込みでの提出全般はオンラインファクタリングの必要書類で扱っています。
紙の通帳を持たない口座は、もう例外ではない
「通帳が無い」と申告することに、うしろめたさを感じる必要はありません。紙の通帳を発行しない口座は、銀行の側が標準にしてきたものだからです。
国税庁の印紙税額の一覧表では、第18号文書として預金通帳・貯金通帳などが挙げられ、印紙税額は1年ごとに200円とされています。同じ表には、信用金庫など特定の金融機関が作成する預貯金通帳のように非課税とされるものも並んでいます(2026年9月8日確認)。冊子そのものに費用が伴う場合がある、ということです。実際に、三菱UFJ銀行は2022年4月1日以降に新規開設する普通預金口座で紙の通帳を利用する場合、年間550円(税込)の紙通帳利用手数料がかかると案内しています。同行は、Eco通帳(インターネット通帳)を利用すればこの手数料はかからないとしており、当該年1月31日時点で18歳未満または70歳以上の個人と、2022年3月31日以前に開設された口座は対象外と示しています(2026年9月8日確認)。
同行のEco通帳規定には、本サービスにおいては通帳を発行しません、と明記されています(2026年9月8日確認)。銀行が発行しないと決めているものを、利用者が用意できるはずがありません。だからこの状態は、申込先に対しても普通に説明できます。「通帳が発行されない口座です。入出金明細でよろしいですか」と最初に聞けば済む話です。
通帳が無いことに、付け込まれないために
ここが、この記事でいちばん重要な部分です。書類がそろわないと感じているときほど、条件を確かめる余裕が失われます。
金融庁は、ファクタリングを装った違法な貸付けの事案があるとして注意を促しています。同庁が貸金業に該当するおそれがあるものとして挙げているのは、譲渡した債権の回収が業者から売主に委託されていて、売主が集金できなかった場合に売主が債権を買い戻すこととされているもの、売主自身の資金により業者へ支払をしなければならないこととされているもの、そして受け取る金銭が債権額に比べて著しく低額であるものです(2026年9月8日確認)。書類が少ないかどうかと、契約の中身が売買として成り立っているかどうかは、まったく別の話です。
だから、次の順序で考えてください。書類の相談は、申込先へ普通にすればよい。ただし「通帳が無くてもいい」「書類はいらない」という一点だけで相手を決めない。そして売掛先が支払わなかったときの損を、最後に誰が負う設計になっているかを契約書で読む。ここが売主のままなら、それは売買として完結していません。制度としての位置づけはファクタリングは違法なのかで扱っています。
給与ファクタリングについても触れておきます。金融庁は、業として、個人が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて資金の回収を行うことは貸金業に該当するとし、年率換算で数百から千数百パーセントになる手数料が発生する危険性があると示しています(2026年9月8日確認)。当サイトは、個人向けの取引を利用の対象として案内していません。不安があるときの窓口として、同庁は金融サービス利用者相談室(0570-016811)、消費者ホットライン(188)、警察相談専用電話(#9110)を案内しています。
申込みの前に、3つを言葉にしておく
書類が足りないかもしれない、という不安は、聞くべきことを決めると小さくなります。相談の前に、次の3つを自分の言葉にしておいてください。
| 先に決める・聞くこと | 何のために聞くのか |
|---|---|
| どの形式で出せるか(画面の出力・PDF・銀行が発行する明細・口座連携) | 認められない形で用意して、出し直しになるのを防ぐため |
| どの期間が必要か(直近3か月分か、6か月以上か) | 自分の口座で遡れる範囲を超えていないかを先に確かめるため |
| 口座名義をどう示すか(屋号付き口座、旧姓、法人と代表者個人の違い) | 請求書の振込先と口座の名義が一致しない理由を説明できるようにするため |
そのうえで、売る債権の側も整理しておきます。金額と支払期日が決まっていること、納品や役務の提供が終わっていることは、記録の形とは別に見られる部分です。売れる債権の条件はファクタリングできる売掛金の条件に、書類全体の考え方はファクタリングの必要書類にまとめています。個人事業主の方は個人事業主のファクタリングに必要な書類もあわせてご覧ください。
売掛先に知られたくないかどうかも、先に決めておく論点です。方式によって売掛先の関与が変わるため、2社間ファクタリングとはを読んでおくと、相談の場で条件を絞れます。
確認の順番
整理します。ファクタリングは債権の売買であり、確かめられているのは冊子ではなく、売掛先からの入金がその口座に記録されているかどうかです。だから最初の質問は「通帳が無いと使えないのか」ではなく、「入金の記録を、自分は何の形で出せるのか」になります。
次に、自分の状態を3つに分けます。最初から発行されていない口座か、記帳していないだけか、紛失や口座の切り替えか。出せる記録も、かかる日数と費用も、それぞれ違います。銀行に発行を頼む形は日数と費用がかかるため、画面から出せる形で足りるかを先に確認してください。
最後に、公表されている必要書類は会社ごとに違い、20社中9社しか確認できていないという前提を忘れないでください。「通帳」と書いていたのは2社で、うち1社はWeb通帳を含むと明記していました。記録できた表記の中に、紙の冊子に限ると明記した会社はありませんでした。それでも、書類の少なさだけを理由に相手を決めないでください。買戻しの定めがないか、売主自身の資金で払う約束になっていないか、買取代金が著しく低額になっていないか。この3点は、書類の話とは切り離して契約書で確かめます。
ほかの状況別の論点は利用条件・ケース別から辿れます。契約書の条項の意味や、個別の取引が貸金業に当たるかどうかの判断は、契約の前に弁護士など権限のある窓口へ確認してください。税務上の扱いは税理士へご相談ください。
この記事の出典
手数料・条件・手続きは、下の一次情報で確認できた表記だけを載せています。 確認日以降に変更されている場合があるため、申込みの前に各社の公式ページで確かめてください。
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」 金融庁 / 確認日 2026年9月8日
- 国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」 公的機関 / 確認日 2026年9月8日
- 三菱UFJ銀行「紙通帳利用手数料(2022年4月以降に新たに普通預金口座を開設されるお客さま)」 各社の公式ページ / 確認日 2026年9月8日
- 三菱UFJ銀行「Eco通帳規定」 各社の公式ページ / 確認日 2026年9月8日
- ソニー銀行「証明書発行手数料」 各社の公式ページ / 確認日 2026年9月8日
- アクセルファクター「よくある質問」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- うりかけ堂「よくあるご質問」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- PAYTODAY公式サイト 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- 日本中小企業金融サポート機構「FACTORU」 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日
- Flex Capital ファクタリング 各社の公式ページ / 確認日 2026年8月19日